英語ができない教師はどうするのか

では、英語公用語化はどうでしょうか。

こちらも大阪公立大学については批判的な見方が多数です。

大阪公立大学に限らず日本の大学は日本語による授業が基本です。これを英語に変えるとなると、専門知識や教育力だけでなく英語力にも優れた教員が必要となります。

一方で、英語力が劣り英語での授業ができない教員はクビにするのか、という話にもなってしまいます。下手すれば労使紛争となってしまいかねません。

教員側だけでなく、学生の方も問題です。授業はゼミなど少人数授業も含みます。学生も発言することで成立するわけですが、英語公用語化となると、ゼミでの発言も全て英語になるはず。そこまで英語力の高い学生は多くありません。

文部科学省「令和3年度英語教育実施状況調査」によりますと、2021年時点でCEFR A2レベル(英検準2級)相当以上を取得、もしくは取得していないが相当以上の英語力を有している高校生の割合は46.1%でした。

大阪公立大学は難関国公立大の一角ですので平均よりも英語力は高いでしょう。それでも最初から話せるかどうかは別です。よほどしっかりとした導入教育を展開しないと、少人数事業では発言できない学生を量産するだけになってしまいます。

こうした問題点は全学での一斉導入でも一部学部での先行導入でも同じです。

英語公用化した楽天のケース

大学ではないですが民間企業で英語を公用語化した事例として知られるのが楽天グループです。同グループは2012年7月より正式に英語化に移行。幹部会議などは海外事業だけでなく国内事業でも英語で進められることになりました。

創業者で現在も楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は朝日新聞インタビュー(2021年3月17日公開)で英語公用語化について、次のように話しています。

「これ(英語公用語化)によって、日本的な企業風土を打破することができたことに加え、本当の意味でのダイバーシティー(多様化)の追求ということに成功しつつあると思っています。世界から人材を集めているので、本当に強烈、強烈な才能あふれる社員がたくさんいます」(朝日新聞GLOBE+ 2021年3月17日公開記事)

その反面、「煩雑な作業が増えただけで無意味」と懐疑的な意見が社内外からはあがっています。

楽天グループは今年2月14日、2023年12月期の連結決算で最終損益が3394億円の赤字であることを発表しました。三木谷氏の「成功しつつある」が正しければ、もう少し違った結果になっていたことでしょう。