これまでにあった秋入学論争
まずは秋入学について。1980年代から現在まで秋入学論争が4回、起きています。
1987年(中曾根康弘内閣の臨時教育審議会)、2007年(安倍晋三内閣の教育再生会議)、2011~2013年東大、2020年(コロナ禍による休校措置からの署名活動)の4回です。
それぞれ背景や経緯は微妙に異なりますが、4回とも推進派の敗北となりました。
秋入学が導入されなかった理由は4回とも同じです。1校のみ、または大学の秋入学導入だと、高校卒業後と大学卒業後にそれぞれ数カ月の空き期間が発生する、空き期間で語学留学などをすると家庭負担が増える、そもそも、他の教育機関が春入学のところに大学だけだと整合性が取れない、などなど。
全ての教育機関を秋入学に移行する場合は、最低でも30本もの法律変更が必要となります。さらに、移行期間における教員・場所の確保などで1000億円単位の投資が必要ですし、家計負担も大きなものになります。
費用対効果があまりにも悪すぎ、結果として秋入学は見送られ続けています。
大阪公立大学の秋入学構想は戦後5回目となりますが、論点は同じです。まして1校だけとなると、かつては東大も検討し、結果として断念しました。
企業側からの本音
そのうえ、大阪公立大学は地元出身者が約4割を占める、公立大学です。
グローバル志向の学生もいますが、どちらかといえば、地元志向ないし国内志向の学生が多数です。実際に大学が発表している「過去5年間就職先ランキング(学部)」の22年度を見ると、1位大阪市役所、2位大阪府庁、3位オービック、4位大阪国税局、5位大和ハウス工業となっています。
関西の企業に就職する場合、卒業から就職までの空白期間をどうするか、という問題に直面します。
学生の方はギャップイヤーで対応(大阪府側がその期間の活動費を補助するなど)するとしても、です。
地元企業からすれば「さっさと就職させてくれ」が本音でしょう。しかも、大阪公立大学と他大学出身者を、どのように整合させるのか、企業からすれば手間が増えるだけです。
こうした問題を考えると秋入学については、大阪公立大学も5回目の「敗北」となる可能性が高いでしょう。