Q:新しい分野に打ってでるのは「時代に遅れる」ことへの恐怖では?

私は20年以上このテーマについて研究してきましたが、コア資産を早々に諦める理由として、「時代に立ち遅れるという恐怖」は3位か4位です。最大の理由は「隣の芝生は青い」というものです。“Cold Truth about Hot Markets”という言葉がありますが、ホットに見える市場ほど厳しい環境です。成長しているように見える市場に目移りして事業をむやみやたらに広げてしまう企業があとをたちません。

また、コアビジネスにおいては、その市場を知り抜いているがゆえに、「もう打つ手はない」と諦めがちです。経営者層が自分たちの手腕に過剰に自信をもつことによってほかの市場でもうまくやれる、周辺領域にでていけば必ず違うかたちで付加価値を提供することができる、すでにコア領域でやるべきことはやった、と勘違いするのです。

また、これ以上アイデアが出てこないという全体的な疲弊感によって最終的にじぶんたちのコア資産は老朽化してしまったという結論を導き出してしまう傾向もあります。じっさいに顧客と話をしてみると、コア事業のなかにどれだけ多くのものが眠っているかに驚かされますが、企業がそれらを早々に諦めてしまうことにはさらに驚かされます。

Q:これまでコンサルタントも「チェンジ」「イノベーション」「スピード」といったものの重要性をさんざんといてきたと思うのですが、それは間違っていたのでしょうか。
Repeatability
[著]クリス・ズック, ジェームズ・アレン[訳]火浦 俊彦, 奥野 慎太郎(プレジデント社)

ビジネスリーダーやコンサルタントはあまりにも次のホットなアイデアはどこにあるかという目先にとらわれがちで、古いものよりも新しいものがよく見えてしまう傾向があります。そこに繰り返し多くの事業のリーダーが陥る落とし穴がある。はやりにおどらされずにコアに照準があわせられるかどうかが勝者となるか敗者となるかの大きな分かれ道です。

チェンジ、イノベーション、スピードを手中におさめるためにはコア事業でリーダーシップを持ち得ているかどうかが大きくかかわってきます。そのなかで再現可能なモデルをうまくまわせているか、顧客から現場にフィードバックする学習ができているかが問題です。それが土台としてあってこそほんとうの意味での変革や革新が実現できるのです。

これと関連していえば、唯一の「グローバルモデル」というものを見直す時期にもきていると思います。単一のグローバル組織、単一のサプライチェーン、人材チェーンを構築できると思われていた時代もありますが、ローカルとグローバルのバランスを見直すことが大事です。途上国と先進国ではオペレーション管理が違いますし、対顧客というと点では、ローカルなモデルが必須です。