「主人を食べて生き残ったペット」を飼う気にはなれない
問題は、このペットをどうするかだ
遺された親族や家主にとっては、主人を食べて生き残ったペットを飼う気には倒底なれない。
そこで特殊清掃業者にゴミと一緒にペットの処分も頼む。
特殊清掃業者にとって、これは手間のかかる負担の重い仕事だ。
まず動物保護団体のところへ連絡し、引き取りを依頼する。そこが承諾してくれればいいが、そうでなければ保健所へ連れていくことになる。
ただ、最近は保健所が殺処分を減らすために、動物保護団体を複数箇所回って断られたという証明がなければ、受けてもらえなくなっている。
そのせいで、業者は何軒もの保護団体を回らなければならなくなる。
浴槽の水は体液で赤茶色に変色していた
酒本氏は言う。
「お年寄りが寂しさからペットを飼う気持ちはわかります。しかし、親族がペットに食べられてしまったご遺体を見た時のショックは計り知れません。独居のお年寄りには、きちんとそこまで考えてペットを飼うかどうかを決めてほしいと思います」
こうした悲惨な現場に足を踏み入れ、仕事をする業者の人たちの精神的な負担は大きい。酒本氏は従業員を守るために細心の注意を払っているという。
少し前も、酒本氏はそんな現場に出くわした。浴槽に入っている時に突然死した人の特殊清掃を依頼されたのだ。
酒本氏が家に行ったところ、遺体は死後何週間も経て発見されたために跡形もなく溶けてしまっていた。警察は骨や肉の塊こそ運んでいったものの、浴槽の水は体液で赤茶色に変色し、頭髪や体毛などが大量に浮いていた。
酒本氏はそこに手を差し入れ、排水口に溜まった固形物を取り除かなければならなかった。