マスコミ報道の「一夜づけ知識」

それはそれでいい。しかし、私が案じるのは、これを報じるメディアも(行政も?)ちゃんと分かっているのかなということだ。

某紙の記事には「改正案が成立した場合、この部分は公布から6カ月以内に施行される」なんてことが書いてある。

6カ月以内なんかじゃないぞ。今すぐだ。なぜなら、今回のこれ、現行法の念押しに過ぎないからだ。600Wのハイスピード型(20km/h以上出るもの)は、最初から原付一種、それを超える1000Wまでのものは原付二種としてすでに法律で決まっている。いわゆるモペッドは、法改正の前後を問わず、最初から「電動原付」なのである。

ついでにいうと各紙各局が「モペット」と呼ぶのにも、私は強い違和感を持っている。モペッドはMotor+Pedalで、Mopedなのだ。最後の「ト」は濁った「ド」。分かってない記者が分かってない記事を書いているというのが、こんなところにも出ていると思う。

原付の始まりは「人力アシストオートバイ」

そもそも「原付バイク」という成り立ちから考えてみるといい。原付とは「原動機付自転車」の略。もともとが「自転車に簡易なエンジンをつけたもの」だ。

戦後日本のミニバイク黎明れいめい期、ホンダをはじめとする2輪メーカー各社は、自転車(いわゆる運搬車)に小さなレシプロエンジンを取り付け、これなら楽に走れる、と売り出した。ユーザーはそのエンジン音から「バタバタ」と呼んだものだ。

エンジンスタートはペダルを回しながらONにした。まだレシプロエンジンが非力だった時分だったから、坂道を上るときは、ペダルを踏んで、エンジンを人力でアシストした。今で言う電動アシスト自転車の逆だ。人力アシストオートバイ。それが原付の始まりだった。

製造コストが安く、お手軽なのに楽ちん、昭和の高度成長期に物流の一翼を担った。50ccスクーター(原付)が、税金面で優遇され、免許試験がごくごく簡単なものなのは、その時代のなごりだ。

原動機はガソリンであれ、電動モーターであれ、法律上の立ち位置は同じ。以前はバッテリーの性能が今のようによくなかったので、電動モーターが実用的じゃなかっただけなのである。

ちなみに「電動アシスト自転車」はあくまでペダル踏力をアシストするという形であって、トルクセンサーによる厳密な出力制御が前提であり、電ジャラスとはまったく異なっている。