「限定販売」の意味

思いがけず山口県の地域活動に波及したこともあり、サクラサク出前セットはいよいよ在庫が足りなくなってしまった。元々限定販売であり、以降の生産計画もあり急に増産することは難しい。うれしい誤算ともいえるが、機会ロスとみることができるかもしれない。

しかし、ユーザー参加型製品開発を考える上で、最初から限定販売という制限を取り入れることは、とても大事なことであるようにも感じる。というのも、逆に限定販売ではなく一気に大量生産にまで持っていくという場合には、おそらくユーザー参加型製品開発の多くはうまくいかなくなってしまうように思われるからである。

理由ははっきりしている。通常の多くの製品は、周到な調査や生産計画のもとで開発販売に至る。ユーザー参加型製品開発も同様だが、しかし一方で、ユーザー参加型製品開発では販促と同期された開発プロセスに重きが置かれるために、通常の開発プロセスとは少し異なった形で作業が進む。このとき、最初から大量生産までを考えてしまうと、アイデアの新奇性や画期性の問題であったり、あるいは実際の販売見込みについて齟齬が生じたりして、開発販売に至る前に停滞してしまいかねない。そもそもSカレでは、実際の開発販売は予約販売の実需をベースにして行なわれる。それは極めて小さいロットサイズであるが、そのぐらいから始めたほうが結果的にうまく開発を進められるのだろう。

元々ネスレでは、限定販売やテストマーケティングといった試みを行なってきた経緯がある。今では定番となった期間限定という販売方法を日本で大きく始めたのもネスレだったという。こうした仕組みは、当初にあっては小売店対応であったり、あるいはリスク分散のためだったりしたといえるが、意外にSカレやユーザー参加型製品開発についても親和性が高かったといえる。

■『マーケティング優良企業の条件』
嶋口充輝他/日本経済新聞社/2008年 

 

Sカレが実行重視の活動であるとすれば、それ自体は企業にとっても重要なやり方といえるのかもしれない。とにかくまずはやってみる。その際には、うまくいかなくとも傷口が大きくならないように、小さく、そして早くやってみる。やってみながら方向性を修正し、だんだんと規模を大きくしていくという感じだろうか。