国債の債務残高は1000兆円を超えている

戦後しばらくは、日本の財政は国債発行なしで運営されていましたが、1965年に初めて国債が発行されます。さらに経済成長率が少しずつ鈍化し、税収が伸び悩む一方、長寿高齢化によって、年金、医療、介護の財政負担が増えました。子育てや教育への支援、公共インフラの充実を求める国民の期待に応えつつ、税負担を求める政治的リスクを避けるため、国債発行は年々増えています。

令和5(2023)年度の国民への公共サービスに使う一般会計予算の総額は約114兆円で、その31%は国債で賄われています。これまで50年近く積み上げてきた国債の債務残高は1000兆円を超え、毎年の元利払いは25兆円と予算の2割に達しています。前の世代の借金の元利払いのため、現在の私たちの納めた税金の2割は、私たちの判断で使い道を決めることができないのです。

コインの上にあるTAXと書かれた木製キューブ
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
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国債残高で身動きがとれない状況

また、我が国の経済運営も私たち日本人の思い通りにいかない厳しい現実があります。グローバリゼーションの進展によって、以前にもまして国際マーケットの動向に日本経済が影響されるようになり、経済を思うように動かせない時代に入っています。例えば、現在の物価高です。ウクライナ侵略による原油、穀物などの国際商品の価格高騰もありますが、それ以上に、日米の金利差で、円を売り、ドルで運用する圧力による円安の影響が大きいと言われています。2023年11月の時点で、1ドルは約150円です。2022年は1ドル130円、新型コロナ禍前は1ドル110円でしたから、為替変動だけで、輸入品は約4割の物価高騰です。

しかし、金利を上げる政策をとれば、国債残高1000兆円ですから、金利1%上昇につき最終的な国債費は10兆円以上増え、その分、公共サービスに回るお金が減るという八方ふさがりで、国債残高で身動きがとれない状況です。

今は物価高で国民生活は大変です。しかし、物価高に耐えられる高額所得者までを対象にした、バラマキ型の減税や給付金などはやめ、生活が困難な人のみを対象にした対策に絞るべきです。そのうえで、国内経済を再生する抜本的対策に力を入れ、不要不急の支出を減らし、財政規律を回復する日本政府の姿を見せれば、為替相場は円高基調に反応し、物価上昇は緩やかになるでしょう。