「自己一致」した人には安心感を覚える

この聴き方をする際に重要なことが、「自分の状態」です。

心理学の領域では「自己一致」と言われるものです。自己一致とはつまり「自分のありのままの状態を理解し、受容して、それを隠すような状態をつくっていないこと」です。

なぜでしょう? 相手は、聴き手がどのような人であれば自分のありのままを伝えることができると思いますか?

それは聴き手が聴き手自身のありのままを受け入れて、許容できている人です。そうした聴き手に対しては、交渉相手も「ありのままの自分を出しても大丈夫」という心理的な安心感を覚えるのです。

少し難しいかもしれませんが、気が弱くても話がうまくなくてもできる聴き方と言えます。

緑色の背景に心臓のオブジェクトをのせる子供の手のひら
写真=iStock.com/takasuu
「自己一致」した人には安心感を覚える(※写真はイメージです)

沈黙という聴き方

「沈黙という聴き方」と言われると、「沈黙していたら交渉が進まないじゃないか」と総突っ込みが入るかもしれません(笑)。

もちろん、最初から最後まで沈黙を貫いて何も話さなくてよいと言っているわけではありません。

ここでお伝えしたいのは、交渉相手の話を聴くときの姿勢の1つとして沈黙が効果を発揮するときがあるよ、ということです。

交渉もコミュニケーションですから、交渉相手の言ったことに対してこちらの思ったことや意見、希望を伝えるのが基本です。でも、つねにこの基本型で対応すればよいわけではありません。