身だしなみの習慣をつけるには

帝国ホテルの職場には、フロントの裏でも、レストランと調理場の入り口にも、鏡が置いてあるそうです(『帝国ホテルのおもてなしの心』)。ホテルマンは、必ず鏡で自分自身をチェックしてから、仕事に入るのです。

鏡で自分の姿を見ることはよいことです。髪型の乱れや服装の乱れをすぐに直すことができますし、背筋を伸ばして歩くこともできます。鏡を見ると、私たちは、まるでプロのパフォーマーが舞台に上がったときのように、「オンステージ」の状態になるのです。靴のかかとの部分を踏みつけたままの状態にしたり、だらだら歩こうとしたりすることもしなくなります。

上司が、社員の身だしなみについて口うるさく指導している会社があります。毎日のように身だしなみについて声を荒らげて指導をしているわけですが、私が経営者なら、職場に大きな鏡を設置するでしょう。なぜなら、職場に大きな鏡を置いておけば、社員は否応なく自分の姿をチェックするようになりますし、わざわざ上司が指導する必要もなくなるからです。

鏡を置いておけば、社員は勝手に服装チェックの習慣を身につけてくれます。

東京・四谷にある学習院の初等科は、校内に鏡がたくさんあることで有名です。だいたい小学生は、身だしなみなど気にせずだらしない恰好かっこうをしているものですが、学習院に通う子どもがきちんとしていられるのは、校内の鏡のおかげであろうと心理学的には分析できます。鏡があると、身だしなみもそうですが、心理的にもきちんとすることが知られています。

愛子さまが学習院初等科を卒業し、天皇、皇后両陛下へのあいさつのため御所に向かわれる皇太子ご一家=2014年3月18日午後、皇居・半蔵門[代表撮影]
写真=時事通信フォト
愛子さまが学習院初等科を卒業し、天皇、皇后両陛下へのあいさつのため御所に向かわれる皇太子ご一家=2014年3月18日午後、皇居・半蔵門[代表撮影]

アメリカにあるモンタナ大学のアーサー・ビーマンは、ハロウィンのときに、キャンディの入ったボウルを置いておき、「一人一個まで」と書いておきました。なお、ボウルは2カ所に用意されていて、ひとつのボウルの後ろには大きな鏡を置いておき、自分の姿が映るようにしておきました。それから、お菓子をもらいにきた363名の子どもをこっそりと観察してみると、鏡の置かれたボウルのところでは、子どもたちも「一人一個まで」という指示にきちんとしたがったのに、鏡のないボウルのところでは、2つ、3つのお菓子をとっていってしまうことが判明したのです。鏡があると、心まできちんとするのです。

職場の社員の身だしなみ、あるいはエチケットやマナー意識を高めたいのであれば、鏡を設置してみましょう。そうすれば、上司がガミガミ指導をしなくても、社員自身で気をつけるようになります。

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