インドではタクシー運転手がビジネスの提案をしてくる

生徒には、いろいろな局面でのサバイバル能力を獲得してもらいたいのです。大学入試も、就職してからの仕事においても、人生はサバイバルの連続です。その中で、自分で考えて対応し、強く生き残っていく必要があるのです。学校の中でも、他人からのちょっとしたひとことで心に傷を負ってしまう生徒もいます。

他人から何かを言われたくらいで、自分の人生に何か問題があるのでしょうか。何もありません。そのように考えてほしいです。しかし、サバイバル能力がないと物事をいちいち気にするのです。他人から突っ込まれたら、簡単に凹むのではなく、相手に対して面白く切り返せばいいのです。

インド人のサバイバル能力はとても高いのです。タクシーに乗れば、運転手からさまざまなビジネスや商売の提案が出てきます。路上でホームレスの貧しい子供が、捨てられたガラクタを集めて作った物を売りに来ます。彼らは自分で考えて必死に生きています。日本では社会保障制度で守られ過ぎているのかもしれませんが、もしその制度が機能しなくなると何もできなくなるのではと危惧しています。

推薦入試をどんどん推進

生徒たちをルールで縛り、違反するたびに罰を与えていては、自己肯定感は決して育ちません。生徒会の中でも、摩擦を避けて自由でフランクな議論は出ないでしょう。それは大人の社会と全く同じことです。生徒会委員の選挙も無投票で決まることが増えていますが、それは地方の市町村議会選挙でも同様な状況です。それでいいのでしょうか。

私が校長に就任してからは、具体的な対策として、弁論大会などの外部での活動への積極的な参加を奨励しています。ボランティア活動をしている生徒には、関連大会への参加を呼び掛け、表彰もされました。インド系の学校や米国の大学との交流も始めました。

大学進学で推薦入学について積極的でない学校もありますが、私は推薦入学をどんどん推奨しています。そうすることで、単なる試験の点数以上のレベルの大学に入学でき、本人の将来にとってより良い影響をもたらす可能性があるからです。生徒自身の基本さえできていれば、推薦入学であっても、入学した大学で必ず上を目指すと確信しています。

海外出身者として初めて日本の公立高校の公募校長に就任したプラニク・ヨゲンドラさん(ヨギさん)
撮影=プレジデントオンライン編集部
海外出身者として初めて日本の公立高校の公募校長に就任したプラニク・ヨゲンドラ(通称よぎ)さん

後編に続く)

プラニク・ヨゲンドラ(Puranik Yogendra)
茨城県立土浦第一高校・付属中学校長
1977年、インド・ムンバイ生まれ。インド・プネ大学で学士号と修士号を取得。グローバスIT企業で約13年勤務後、2010年にみずほ銀行入行、2019年には楽天銀行に企画本部副本部長として入行するも、同年4月の東京都江戸川区議選に出馬し初当選。2021年東京都議選では落選。茨城県の民間人校長公募に応募し、22年4月より同校副校長、23年より現職。
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