このまま対策が遅れれば金融不安に波及する恐れ

新築住宅の下落ペースが強まるなど、今のところ、不動産市況下げ止まりの兆候は見いだせない。当面、個人消費、設備投資、鉱工業生産などの低迷懸念は高まるだろう。

景況感の悪化を食い止めるため、中国政府は景気刺激策を打つ必要がある。2023年10月、中国政府は1兆元(約20兆円)の国債増発計画を発表した。中国政府は調達した資金の使途として、自然災害からの復興などのためのインフラ投資を増やす方針を示した。

一方、債務問題が深刻な企業に公的資金を注入し、不良債権処理を急ぐ考えを明確に示していない。1990年代にわが国が経験したように、不良債権の処理が本格的に進まない中で公共事業に関連する財政支出を増やしても、景気刺激の効果は一時的なものにとどまる。

むしろ、不良債権処理の遅れによって、金融システムの不安定感は高まる。それは、個人の消費、企業の設備投資の意欲を低下させる。経済のデフレ環境も鮮明化する。そうなると、政府は追加の金融緩和を実施し、地方政府などの債券発行や銀行融資を支えようとするだろう。

株を投げ売り→資金流出が進む負のスパイラルに

中国経済全体の効率が低下した中、公債の発行増加によるインフラ投資は不良債権の増加につながる恐れが高い。地方政府の財政状態は追加的に悪化し、融資平台を含めデフォルトや破綻は現実味を帯びる。地方政府の財政悪化は、産業補助金の減少や鉄鋼など基礎資材の生産下振れ要因になる可能性も高い。

現在の中国政府の経済政策を見ると、短期的には、債務問題は深刻化し景気低迷懸念も高まる可能性が高い。年初以降、中国株を売却する主要投資家は増加した。外国為替市場で人民元に追加的な下落圧力がかかると、中国株や信託商品などを投げ売る中国の個人投資家も増えるだろう。その場合、中国からの資金流出は勢いづく。

それが、すぐにリーマンショックのような世界経済の混乱につながるとは考えづらいが、東南アジアの新興国など、中国との関係の強い経済、資産価格の下押し圧力は高まるだろう。中国の債務問題は、今後の世界経済にとって無視できない阻害要因になりそうだ。

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