なぜ危険水準に達するほど債務残高が膨らんだのか
ブルームバーグによると、2023年10月~12月期、GDP対比の中国の債務残高は7月~9月期の284.5%から286.1%に上昇した。2008年末の時点で中国の債務残高はGDPの141%程度だった。そこから15年間でほぼ倍に膨れ上がった。
部門別に債務残高を見ると、非金融一般企業(10月~12月、167.3%)、家計(63.5%)、政府(55.3%)だった。いずれも趨勢的に増加した。2020年以降、コロナショックが深刻化してから、政府の債務残高ペースがいくぶんか強まったようだ。GDP対比の債務水準は持続可能な水準を上回ったと考えるべきだろう。
債務残高の膨張の背景には、リーマンショック後、中国政府が投資に依存した経済運営を強化したことがある。2008年11月、政府が発表した4兆元(当時の為替レートで57兆円程度)の経済対策を実行するため、地方政府は不動産デベロッパーに土地の利用権を売却した。デベロッパーはシャドーバンクなどから借り入れを増やし、マンション建設を増やした。
バブル絶頂期の日本・アメリカの水準を上回った
地方政府は、傘下の融資平台を通して借り入れを増やしインフラ投資を実行した。債務に依存した投資増加で、2011年半ばまで経済成長率は前年比10%を上回った。マンション建設も急増し、基礎資材などの生産、雇用機会も増加した。結果として、足許の中国の債務残高は、過去、大型バブルが絶頂期を迎えた時点の日米の債務残高水準を上回った。
国際決済銀行(BIS)のデータによると、1989年末、わが国は資産バブル(株式と不動産の価格が理屈で説明できないほどに高騰した経済現象)の絶頂期を迎えた。その時点で、家計と一般企業の債務残高はGDP対比201.0%だった。2005年9月末、住宅バブルのピークを迎えたタイミングで米国の債務残高は同154.1%だった。
その後、日米でバブルは崩壊し、景気は悪化した。リーマンショックが起きた2008年9月末の米国の債務残高は同169.9%だった。日米の教訓から見ると、中国の債務残高は危険水準にあるといえるだろう。