「実際の債務残高はそれよりも多い」

2023年10~12月期、中国の債務残高は国内総生産(GDP)対比で286.1%に上昇した(米国の金融情報・データ提供企業、ブルームバーグの推計)。中国専門家の間では、「実際の債務残高はそれよりも多い」との見方もあるようだ。

リーマンショック後、中国は借金を増やして不動産やインフラ投資を積み増し、GDP成長率を高めた。しかし、その成長のしくみには限界がある。借金が膨らんで、返済に懸念が出るからだ。

中国共産党の中央規律検査委員会総会で演説する習近平総書記(国家主席)=2024年1月8日、中国・北京
写真=XINHUA NEWS AGENCY/EPA/時事通信フォト
中国共産党の中央規律検査委員会総会で演説する習近平総書記(国家主席)=2024年1月8日、中国・北京

それに対して中国政府は、2020年8月に“3つのレッドライン(不動産向け融資規制の強化策)”を実施した。不動産関連企業の借金が課題になる前にブレーキを踏んだのである。ところが、その規制をきっかけに不動産企業の資金繰りが急速に悪化し、大規模に拡大していた不動産バブルは崩壊した。

投資家が中国株を投げ売る恐れも出てきた

中国政府は相応の政策を打ってきたものの、今までのところ住宅価格には下げ止まりがみられず目立った効果は出ていない。ここへきて、中国政府は景気対策などのために国債発行を徐々に増やし始めた。国債増発によって債務残高は急増し、バブル絶頂のわが国や米国などを上回るまでに中国の債務残高は膨張した。

当面、中国の債務残高の増加傾向は強まる可能性が高い。一方、不良債権処理は後手に回っている。その状況が続くと、中国全体で債務不履行の懸念は上昇する。展開次第で、投資家が中国株を投げ売る恐れも高まる。今後の世界経済にとって無視できない下押し要因だろう。