「幸福」を決める要素は円グラフで表せる
同僚の研究者であるケンとデイヴィッド、そして私は「ずっと続く幸せなんてありえない」という結論には懐疑的でした。
そこで、私たちはその説がまったく見当違いであることを証明しようと決心しました。数年にわたって私たちは研究を続け、なんとその結果、「ほんとうの幸せ」を発見することができたのです。さらに、幸福を決定づける最も重要な要素も特定できました。それは図表1のようにシンプルな円グラフとして表わすことができます。
この円グラフを十分に理解していただくために、「100人の観客で満員になった映画館」を想像してみてください。この映画館にいる100人それぞれが、あらゆる幸福度を体現しています。つまり、とても幸せな人もいれば、まあまあ幸せな人もいて、ひどく不幸な人もいるわけです。円グラフの右下の部分は、意外にも、人それぞれの幸福度の違いのうち50%程度が、遺伝で決定づけられた設定値に起因することを示しています。この発見は、一卵性双生児と二卵性双生児に関する研究から生まれたものです。その研究によって、次のような結論が導かれました。
幸福度の50%は遺伝である
人はそれぞれ特定の幸福度の設定値をもって生まれてきます。その設定値は生物学上の母親か父親、あるいは両方の親から受け継いだものです。それは幸福の基準になるもの、または幸福になれる可能性であって、たとえ大きな挫折を経験したり、または大成功を収めたりしたあとでも、人はその基準点(設定値)に戻っていきます。
つまり、もしも魔法の杖があって、映画館にいた100人全員を遺伝的な「クローン」(または一卵性双生児)に変えられたとしたら、遺伝による設定値分の50%は同じレベルの幸福度ですが、それ以外の部分で彼らの幸福度には違いがあるということです。
これは体重の設定値と似ています。たとえば、ほっそりとやせている恵まれた状態の人は、何もしなくても楽々と体重を維持できます。その一方で、望ましいレベルに体重を維持するためには途方もない努力をしなければならない人もいます。ほんの少しでも気をゆるめたとたん、体重がもとに戻ってしまうのです。幸福度の設定値にもこれと同様のことがいえます。