※本稿は、吉原珠央『シンプルだからうまくいく会話のデザイン』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
初対面では感じの良い人だったのに…
以前、複数の企業の方が集まる懇親会でたまたま知り合い、会話をさせてもらったYさんという女性がいました。彼女は、社交的で言葉遣いが丁寧で、親しみやすい雰囲気を持っていました。
一見すると、Yさんは魅力的で、初対面で感じの良い人という印象を十分与える女性でした。ところが、話し始めてみると、私はとても疲れ始め、早く会話を切り上げたいと思うようになってしまったのです。
その理由は、Yさんが会話の中で、第三者の人たちの話ばかりをすることにありました。
たとえば、「お子さんはいらっしゃいますか?」「何年生ですか?」などと聞かれて私が端的に答えると、Yさんは「私の友人の弟さんご夫妻のお子さんも同学年で、中学校受験を控えていて……」と、私の知らない第三者についての話を3分以上も話し続けるのです。
面識のない人の話題が続き、疲労困憊
ようやくその話題が終わったと思えば、今度は、「お子さんたちは、算数は得意ですか?」と質問されました。それについても端的に答え、「Yさんのお子さんは、いかがですか?」と、質問をふりました。
そして「いや、2年生くらいまでは成績が良かったのですが、学年が上がるにつれ成績が落ちてきてしまって」と言うので、「学年が上がるにつれて内容が難しくなってきますものね」と、私は反応しました。
すると「子供の友達で同じ塾に通うEちゃんという子がいて、その子の集中力がものすごくて……」と、またしても、私とは面識のない人の話題を延々と5分間も話していたのです。
Yさんは決して悪い人ではなかったですし、よほどその話をしたいのだろうと思い、私は穏やかな表情で、適度な相づちなどを入れながら、最低限の礼節を持って聞き役に徹していました。
しかし、私への質問は全て、自分が好き勝手に話したいことの伏線を敷いているだけのことだとわかり、それによってかなりの体力を消耗し、さすがに疲れて頭がクラクラしてきてしまいました。このように疲労感を抱くことで、話を聞く集中力は下がり、ストレスから「早く話が終わらないかな」と、そればかりを考えてしまったのです。