明細書の書き方がけっこうややこしい

次に医療費控除の明細書の書き方の注意点です。

明細書には「支払った医療費の額」と「生命保険や社会保険などで補てんされる金額」を記入する欄があります(図表3)。保険会社から支払われる入院給付金や手術給付金、社会保険から給付される出産育児一時金や高額療養費などのことで、医療費控除を計算するときには給付された金額を差し引きます。

【図表3】医療費控除の明細書
国税庁の資料を基に筆者作成

ただし、「医療費控除の明細書の記載要領」には、「保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても、他の医療費からは差し引きません」とあります(図表3)。

医療費控除を受けられるかどうかの分かれ道

たとえば、入院中の医療費が30万円かかり、健康保険から高額療養費20万円、生命保険会社から入院・手術給付金が20万円支給されたとします。この場合、補てんされる金額は計40万円ですが、差し引く対象となる医療費は、給付の目的となった入院中の医療費30万円なので、「生命保険や社会保険などで補てんされる金額」には30万円と記入します。

このルールを理解していないと、本来は受けられるはずの医療費控除が受けられなくなることがあります。

入院中の医療費30万円以外にも通院の医療費や歯科治療などがかかり、1年間の医療費合計が45万円だった場合を考えてみましょう。「その年中に実際に支払った医療費の額」の欄に45万円、「生命保険や社会保険などで補てんされる金額」の欄に40万円と記載してしまうと、差引5万円で医療費控除できる金額はないことになってしまいます。

補てんされた40万円は、あくまでも入院中の医療費30万円に対するものなので、45万円の医療費から差し引くのは30万円だけです。そうすると差引15万円となり、10万円を超えた5万円分の医療費控除を受けることができます(総所得200万円以上の場合)。