年80万円の赤字より困った不正利用の後始末

Aさんの状況が変わったのは、フラット35の不正利用がマスコミで報道された後でした。自分もフラット35で投資物件を買っていたので心配になり、不動産投資の内容を精査してほしいと弊社に相談に来られました。

物件の収支状況は年間で約80万円の持ち出しで、とてもいい内容とは言えませんでした。一番の問題はフラット35で買った物件をどう対処すればいいのかという点でした。

仮に、不正利用が発覚して住宅支援機構から一括返済を求められても、とても返済する手持ち資金はありませんし、職場にもこのことがバレてしまうと最悪は退職せざるを得ないという状況です。

また、このマンションの実勢価格は2000万円程度の価格で、フルリノベして3000万円以上の売値で買っていました。つまり高値掴みをしてしまったわけで、マンションを売却できたとしても1000万円以上は手持ち金で充当しないといけないという状況がわかりました。

最終的には、借主には実情を説明して退去してもらいAさん自身が中古マンションに住むことで、とりあえずは一括返済を回避することができました。

自分の希望に合わないマンションに住むはめに

ちなみに、借主の退去には賃料の6カ月分の違約金と引っ越し費用を渡して了承してもらったため、結果的には退去費用として約100万円を支払いました。Aさんは「まさか自分がこのマンションに住むとは思ってもみなかった」わけで、全く自分の希望に合った住まいではありませんでした。

残りの3戸の投資マンションは即売却というわけにはいかず、当面は保有することになりました。3戸分の収支は年間で約60万円の持ち出しという最悪の不動産投資となったのです。

ちなみに、Aさんに物件を買わせた不動産会社とその担当者とは現在、連絡が取れない状況だそうです。おそらく、この不動産会社はいわゆる「三為業者」で、少なくとも1500万円程度は抜いていたと思われます。