新築住宅の価格交渉では「300万円の値引き」など、大幅な割引を提示されることがある。「職人社長」を名乗る平松明展さんは「住宅会社の中には、売ることだけが目的で無責任な提案をする営業担当者がいる。例えば金額のみ提示され、仕様が書かれていない契約書は要注意だ」という――。

※本稿は、平松明展『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

家を手にするイメージ
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

家の本体価格だけでは適正な選択はできない

私の会社は工務店です。工務店とハウスメーカーの違いって知っていますか? 役割としては大きな違いはありません。ともに住宅工事を請け負う会社ですが、工務店の場合は特定の地域に限定して運営しています。ハウスメーカーも工務店も規模、事業範囲、営業エリアはさまざまで、その間に位置しているビルダーという業態もあります。

実は、どの業態のどの会社を選ぶかは、目的の住まいを手に入れるための重要ポイント。まずはみなさんが気にされる費用について比較してみましょう。

坪単価で比較します。坪は畳2畳の広さで、建物の費用を坪数で割った額を一般的には坪単価といいます。坪単価を100万円とした場合、30坪の家なら3000万円となるわけです。この坪単価が業態や会社によって違うのです。

坪単価の明確な定義はなく、ルールもそれぞれの会社によって違います。それが落とし穴になることも。家の本体価格だけの比較では適正な選択ができません。そこで業態の傾向をまとめた数値をもとに解説していきます【図表1】。

耐久性や耐震性の低さからメンテナンスコストが高くなる

業態を「ローコストのハウスメーカー」「高性能の工務店」「大手ハウスメーカー」の3つに分けて説明します。坪単価は50万円、80万円、100万円に設定すると、30坪の家の場合、1500万円、2400万円、3000万円と大きな差が出ました。

初期費用のみを見ると、当然ローコストのハウスメーカーに魅力を感じますよね。

では表の下の部分を見ていきましょう。

まず性能ですが、ローコストだと性能にこだわる余裕がありません。高性能な住宅をつくれる工務店と大手は同等の性能を担保できると考えてよいでしょう。これに連動するようにランニングコストは、ローコストがほかの2倍も要することになります。

耐久性や耐震性の低さからメンテナンスコストが高くなり、断熱性や省エネ性の低さから光熱費が高くなるのです。

トータルコストを見ると、4500万円、3900万円、4500万円となります。長期的に見た坪単価も150万円、130万円、150万円と初期費用とは異なる評価になるわけです。