トランプの演説に心を動かされる
トランプ氏はそうした国民の生活上の不満をうまく利用している。12月のネバダ州における支持者集会では物価高に触れて、「バイデンのインフレの悲劇があなた方の貯蓄をむしばみ、夢を破壊している」と訴えた。この言説に心を動かされる人は少なくない。
実際に、バイデン大統領の国境管理・移民政策の失敗やイスラエルの対パレスチナ攻撃に対する軍事支援への反感も相まって、バイデン氏の支持率は民主党支持者の間においても急降下している。
特にバイデンの強固な地盤であったはずの白人労働者、黒人、ヒスパニックなどのグループの一部で、主に経済の面から支持を失っていることが、大きな懸念材料だ。
加えて、妊娠中絶問題や同性婚などで強い支持があった女性票や若年層も部分的に失う可能性がある。
2024年は「クーデターの必要がない」
最も重要な民主党支持者の間でも、バイデン大統領の支持率は急降下している。こうした中、ニュージャージー州のモンマス大学が12月18日に発表したバイデン大統領の支持率は史上最低レベルの34%、不支持が61%であった。
ニューズウィーク誌が12月26日に報じたところによると、2020年の大統領選でバイデン候補が8万票差でトランプ候補から奪ったペンシルベニア州で2023年に3万5589人の民主党員が共和党にくら替えし、2万908人の民主党員が無党派に転身した。一方で、共和党から民主党に所属を変えたのは1万5622人、無党派を選んだのが1万8927人で、民主党は差し引きおよそ2万人の有権者を失っている。
一連の流れを受けてニューヨーク・タイムズ紙は、「トランプ前大統領は、2020年の大統領選の結果をひっくり返そうとクーデターを企てたが、2024年にはクーデターは必要がないかもしれない」とする論評を掲載した。
あまりの不人気ぶりに、進歩派の「第3の候補」として大統領選への出馬を表明したプリンストン大学のコーネル・ウェスト教授は、「大統領選の本選で、私はバイデン氏の対抗馬ではなくなる可能性がある。彼はジョンソン大統領のように撤退するのではないか」と述べて注目を集めた。