「ビタミンの父」が開発した豚肉入りの海軍カレーの効果

今は150mmHg程度で脳内出血を起こすことは、ほぼありません。

ここでも活躍したのはたんぱく質なのではないかとわたしは睨んでいます。

それまで日本人の血管はゴムの入っていないタイヤのようなものだったところ、たんぱく質をとるようになって血管が丈夫になったのではないかと。

日本人が長生きできるようになったのは8割方(おそらくはそれ以上)は栄養の賜物だといえるのです。

これを考えないのは、昔からのことです。

日露戦争のときに陸軍の軍医の責任者だった森林太郎、別名・森鴎外は、脚気は伝染病だと信じていました。だから軍人の食事を変えることはありませんでした。

一方、海軍の軍医の責任者だった高木兼寛は、欧米では脚気はほとんど見られないということに気づき、豚肉に着目します。

豚肉を食べれば身体も大きくなるし、脚気も減るのではないかという仮説を立てたのです。

そこで豚肉入りの海軍カレーを開発し、豚肉カレーが日本人のあいだに広がった。

カレーライス
写真=iStock.com/Rie Tamaoki
※写真はイメージです

豚肉に豊富に含まれるビタミンB1の効果は絶大で脚気の撲滅につながったことから、高木兼寛は「ビタミンの父」として知られています。

栄養状態がいい人ほど長生きするというのは経験的には事実です。

高齢者ほど「栄養が足りない害」のほうが大きい

わたしは高齢者専門の精神科医として患者さんと向き合った経験から、年をとればとるほど「栄養があまる害」より、「栄養が足りない害」のほうが大きくなると断言できます。

中高年のあいだは「血圧が高いなら塩分のとりすぎに注意しましょう」「糖尿病があるなら甘いものは控えましょう」といわれたら、「そうですね」ということでもいいかもしれません。

でも高齢者になったら鵜呑みにしてはいけません。年をとると若いころより腎臓の機能が落ちるため塩分などがおしっこからたくさん出るようになるため、低ナトリウム血症を起こしやすくなります。

これがひどくなると、意識がもうろうとしたり、けいれんを起こしたり、死にいたることもあります。