バブル崩壊、震災による被害、不況……

しかし、「株式会社神戸市」の成功は長続きしなかった。

1991年にバブル崩壊が始まると、神戸を含む日本全国の不動産価格は急速に下落した。起債を含む借入金と地価高騰を前提とした「株式会社神戸市」は立ちいかなくなり、1995年には阪神淡路大震災が起きて神戸は壊滅的な被害を受けることになる。

下向きの矢印を持つビジネスグラフ
写真=iStock.com/peshkov
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震災からの復興過程では、円高や不況が続くなか、多くの工場が海外へと移転したり、本社を東京に移した。数多くあった外資系企業も日本イーライリリーなどを除けば、P&Gジャパン、ネスレなど神戸での規模を縮小した企業も多く、神戸経済とともに神戸港のプレゼンスも大きく低下した。

神戸はもともと鉄鋼や造船、繊維、製靴などの多様な産業で栄えていた。現在も神戸に本社がある上場企業には、川崎重工業、神戸製鋼所、住友ゴム工業、三ツ星ベルト、ノーリツといった製造業に加え、アシックス、ヒラキ、ノエビアホールディングス、シャルレ、キムラタン、ワールドといった衣料、靴、化粧品などの製造や小売り、六甲バター、ロック・フィールド、フジッコ、モロゾフなど食品関係が多い。

地元大企業の流出や衰退は、地元の雇用や下請け企業の業績などにも悪影響を及ぼしており、神戸市では産業の停滞と雇用創出力の低下により、人口減少に繋がる負のスパイラルが続くことになる。

大阪への一極集中が進む

更に追い打ちをかけたのが、大阪への一極集中だ。かつては、「京都で学び、大阪で働き、神戸に住む」ことが理想とされていたものの、今は神戸よりも、大阪のタワマンに住むことが一部ではステータスになっている。大阪梅田の大規模再開発などもあり、大阪一極集中が進むなか、首都圏同様に、富裕層やシニア層に加え、若い共働き世帯を中心に、子育てにやさしく通勤に便利な住処を選ぶ傾向が続いているのだ。

2022年1月まで日本で最も高い(209m)居住用マンションだったThe Kitahama(大阪・中央区)。2022年1月に虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー(221m)が完成し国内2位となった。(写真=W236/Wikimedia Commons

実際のところ、関東同様に、JRと阪急や阪神など多くの私鉄が走る関西では、「乗り換えなしで大阪都心まで通勤通学できるエリア」が広いといえる。

特に、JR西日本が運行する神戸線・京都線の新快速は利便性が高い。大阪駅までわずか21分の三ノ宮はともかく、神戸市郊外のニュータウンから三ノ宮などで乗り換え、大阪都心に1時間以上電車に乗って通うよりも、神戸よりも遠いイメージのある明石から大阪に通う方が乗り換えもなく、電車に揺られる時間も37分と近かったりする。

実際、明石市では子育て世代への支援強化などもあり、人口増加に転じている。また、神戸よりも大阪寄りの西宮、芦屋、尼崎などでも新築マンションの建設や大阪都心へのアクセスの良さから神戸から転出超過の傾向が続いている。