医療をめぐる話題では、SNSで医師を名乗るアカウントが「攻撃的な投稿」を繰り返し、炎上を招くことが多い。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「特に、『医クラ』と呼ばれる医療関係者による過激な投稿が目立つ。この背景には、医療を特別視してきた日本社会の構造的な問題がある」という――。
黒い背景と医師
写真=iStock.com/kuppa_rock
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SNSで炎上を巻き起こす「医クラ」

X(旧Twitter)では、いつも誰かが炎上している。

なかでもネット上で「医クラ」(=医療クラスター)と呼ばれる、医師をはじめとする医療関係者は、たびたび燃料を投下している。

その理由として挙げられるのが、新型コロナウイルス感染症である。この3年間は、彼らの独壇場だった。

「マスクをしろ」「家にいろ」

まるで神様であるかのように、人々に命令し、反論が来れば「素人」呼ばわりして、ねじふせてきた。

しかし、その神通力は、もはや通用しないように見える。

日本の医療制度の問題点

11月17日、インターネットテレビABEMAの報道番組(*1)で、「『国民皆保険制度なくなってほしい』投稿が物議 日本人は延命治療し過ぎ?」というテーマの議論が行われた。この中で、制度アナリストの宇佐美典也氏は、日本の医療制度の問題点として、次の4点を指摘した。

ひとつは「生活保護受給者の医療費がゼロなこと」、ふたつめには「有料老人ホームの隣に病院があり、それを訪問看護で処理して高い診療報酬を取るビジネスモデル」、3つめに「整骨院の保険適用」、4つめとして「延命治療」だという。

この宇佐美氏の放送での発言をまとめたポスト(ツイート)(*2)が、議論を呼んでいる。

というか、そのポストをもとに、「医クラ」の人たちが宇佐美氏に噛みついている、と書くほうが妥当だろう。

なぜ「医クラ」は、いちいち、こうした発言に反応するのだろうか。

もちろん、Xでは、いつも誰かが何かに反応している。

最近では、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻をめぐって、中東政治などの専門家の投稿が「燃え」ているから、とりたてて「医クラ」に限らないのかもしれない。

しかし、この3年間、「医クラ」が、SNSをにぎわせ、人々に与えた影響の大きさは、計り知れない。新型コロナウイルス感染症をめぐる「医クラ」の発信は、決して無視できなかったからである。