AIが発達すると、私たちの生活はどう変わるのか。実業家の堀江貴文さんは「人間の脳機能をAIに代替させる研究が進んでおり、実現すれば不老不死も夢ではない」と指摘する。新著『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』(サンマーク出版)より、脳科学者・茂木健一郎さんとの対談を紹介する――。

※本稿は、堀江貴文『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』(サンマーク出版)の第4章「人とAIの違いってどこにありますか?――脳科学者 茂木健一郎さんと考える」の一部を再編集したものです。

「ヴィンジの不確実性」とは

【茂木健一郎】AIをめぐる議論が世界中で行なわれているなか、日本語圏ではほとんど語られていない面白い概念に「Vingean uncertainty(ヴィンジアン・アンサートゥンティー:ヴィンジの不確実性)」があります。

これはヒューゴー賞の受賞歴もあるSF作家で数学者のヴァーナー・ヴィンジに由来する概念で、SF作品『2001年宇宙の旅』の中に出てくる石柱状の謎の物体「モノリス」に由来しています。高度な知性を持った文明が何を意図して人類にモノリスを持ってきたのか誰もわかりません。「ヴィンジの不確実性」とは要するに「全知全能に近づいた賢い人やモノの振る舞いは、予測ができない」ことを意味します。

具体的な人物を思い浮かべるとわかりやすいのですが、イーロン・マスクがいい例です。ツイッターを買収してからいきなりサービスに閲覧制限をかけてみたり、サービス名を変えてみたりと突飛な動きをしています。

彼は以前にもポッドキャストの生放送中にマリファナを吸い出したり、最近ではジョークとして作られた暗号資産「ドージコイン」を支持するかのようにXのアイコンを変えてみたり、予想外の振る舞いを見せ続けています。

人工知能の動きを人間が理解できない日が来る

意味不明な行動を見せる一方、起業家としての彼の卓抜ぶりはご存じの通りです。つまり賢すぎるがゆえに、一般人からは予想もつかない行動を繰り出すわけです。

日本でいえば、ホリエモンも近しい存在かもしれません。彼の行動自体が時代を先取りしていることが多いですが、時に「何でこんなことで炎上しているんだろう」と思わせる話題を振りまいています。数年経ってようやく、「ああ、そういうことだったのか」と伏線が回収されるのです。一方、子どもの行動は意外と意図がわかりやすい。自分と同等か、それ以下の知性を持つ人の行動は理解しやすいわけです。

この概念が重要なのは、今後AIが人間をはるかに超えた高度な知能を持つようになると、人工知能が何をやっているのか人間が理解できなくなる問題があるからです。

対になる概念として「XAI(Explainable AI:説明可能なAI)」についても触れておきましょう。XAIはアルゴリズムが生み出す結果とアウトプットを、人間が理解できるように説明してくれます。たとえば自動運転であれば、AIが急にハンドルを切った時に「なぜ急にハンドルを切ったのか」の理由を説明してくれるのです。