メディアの反省は真剣なものとは到底思えない
今回のBBC報道については、現在の文春社員よりかなり前から相談を受けていました。BBCから文春へのインタビュー取材の依頼に対し、当初は、編集部は出ないで、証言者のみ紹介するという案があったり、OBだから木俣の出演はいいのではないかという話があったりしましたが、私は、あくまでも文春が会社として決めることだと思っていました。
BBC報道を受けて、新たな証言者を次々と誌面に登場させたのは文春の現場の力であり、誇らしく思います。
現在の報道を見ると、手のひらを返したように、「メディアとして反省した」という報道各社のコメントが続出しています。私からすると、真剣、真摯なものとは到底思えません。もっと以前に、独力で自らを検証し、報道するチャンスはいくらでもあったはずだからです。
ジャニーズの圧力のみならず、報道側の自主規制も目立ちました。ただ、例外もありました。文春が出版するあらゆる本は「金スマ」では紹介しないと局側が言っていたのですが、意外にも、中居正広氏あるいは番組スタッフの判断で紹介されたこともありました。『こりトレ』という、肩こりを直すチューブを付録につけた本などは紹介されました。
中には現場で踏ん張った人たちがいたことも事実です。しかし多くの場合には、局全体の自主規制、そして現場が踏ん張らなかったことも、ジャニーズをさらに不可侵にしてしまったと言えるのです。
性的犯罪を許してジャニーズに迎合した企業
この問題は報道だけではありません。ジャニーズの圧力に迎合して、文春に広告を入れないことにしたクライアントの性的虐待への不見識も問われなければならないでしょう。業界用語で言う表4、つまり雑誌の裏表紙にあたる雑誌広告にはジャニーズタレントが起用されていることが多く、このページは金額的にも大きいので、それが痛手となっていました。
スポーツ界も、あらゆる中継にジャニーズタレントを関わらせて視聴率を稼ごうとしてきたのであり、つまり、犯罪集団に加担した行動を取ってきた業界はたくさんありました。ですから、いま急に反省と言われても、私は信じることができないのです。「反省する。私たちは報道すべきだった」と語るMCたち。しかし、これまで私が書いてきたように、今後、ジャニーズ事務所のような力のある組織が犯罪的行為を恒常的に行っていることが判明したときに、広告やタレントの出演を通じて圧力をかけてきても抵抗するという覚悟があって言っているのでしょうか。