「ゆとり」扱いは離職率高めるだけ

コクヨ→「素」でぶつかりあう3年間チューター制度

社会人としての一歩を踏み出した3年前の春。コクヨに入社した北川真衣さんはインターネットで文具の販路拡大を担当する部署に配属になった。けれど初仕事にこんな戸惑いを感じていた。

自分がやりましたと、ひけらかしているみたいで苦手だな……。

販売店向けのウェブサイトで、お勧め商品を紹介するのだが、商品だけでなく北川さんの名前や顔写真も掲載されるからだ。

コクヨS&T コンシューママーケティング事業部の北川真衣さん。

「北川さんが納得して仕事に取り組めるように何度も真剣に話しあいました」とチューターとして北川さんを指導した八木章光さんは振り返った。

「最初から望むような仕事を与えられる機会はほとんどありません。それでも、ひとつずつ仕事を成功させれば、自分の“居場所”ができる。仕事を続けていくモチベーションはそこから生まれると思うんです」

数年前までコクヨはひとつの問題を抱えていた。離職率の増加。当時、入社3年以内に20%前後がやめていた。2005年、改善策として先輩社員がひとりの新人を3年もの長期にわたってマンツーマンで教育する「チューター制度」を導入した。それまでは研修期間中にいくつかの部署の実務を経験した後、本配属になっていた。

「一律に一気に教え込んでも方向性を見失ってしまう」

八木さんの言葉は自身の体験に起因している。八木さんには2度の転職経験がある。かつてはトップダウン方式の体育会系組織にも勤務した。入社前の短期間に社会人としての常識や心構えから扱う商品の知識まで詰め込んだ。80人いた同期で、いまもその会社に残っているのはたったの3人。新人教育も担当した。そんな経験をしたからこそ、八木さんはチューター制度を「いまの時代にあっている」と実感している。

「個々のキャラクターや将来設計を踏まえて、コミュニケーションをとりながら指導できますから」

コクヨS&T CMD事業部の八木章光さん。

チューターとなるのは、新人が配属された部署の20代後半から30代後半の社員。部長が仕事ぶりや人柄などを考慮して、人材開発部に推薦。選ばれると3年間の育成計画書を作成し、上司として日々の実務の指導にあたる。チューターに義務づけられるのは、半年に1回の新人面談とその結果を踏まえた計画書の提出、そして、年に一度の研修。ふだんの実務指導は個々の裁量に任されている。