不法行為は犯罪ではなく私人間の問題

1-2.月極駐車場などへの無断駐車:犯罪ではなく、不法行為が成立するのみ

一方、住居・邸宅・建造物の囲繞地(敷地など)に当たらない私有地への無断駐車には、住居侵入罪などが成立しません。その他の罰則規定も存在しないため、犯罪には当たらないことになります。

無断駐車によって、私有地の所有者は一定の損害を被るため、駐車した人は所有者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法709条)。

しかし、不法行為は犯罪ではなく、あくまでも私人間の問題です。そのため、警察に解決を求めることはできず、当事者間の交渉や訴訟などを通じて解決しなければなりません。

レッカー移動などの「自力救済」は原則禁止

2.無断駐車された車両をどかす方法は?

無断駐車された車両をどかしたいとしても、レッカー移動などで強引にどかすことは不可とされています。

あくまでも平和的に交渉や訴訟などで解決する必要がありますが、正式な裁判手続きには時間がかかるケースが多いため、私有地の所有者は難儀しがちです。

2-1.「自力救済」は原則禁止:レッカー移動などは不可

訴訟などの司法手続きによることなく、実力で権利を回復することは「自力救済」と呼ばれています。無断駐車のケースでは、私有地の所有者がレッカーなどを手配して、強引に車両をどかす行為が自力救済の典型例です。

故障した車を牽引するレッカー車
写真=iStock.com/ThamKC
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私人間のトラブルは司法手続きによって解決すべきであるため、自力救済は原則として禁止されています。

自力救済が認められる余地があるのは、違法な権利侵害に対して現状を維持することを不可能または著しく困難とする、緊急やむを得ない特別の事情が存する場合のみです(最高裁昭和40年12月7日判決)。

※最高裁昭和40年12月7日判決

飲食店の店舗が建っている土地の貸主(所有者)が、その土地に板囲いを設置しました。土地の使用貸借契約はすでに終了していたため、店舗に入れないようにすることが目的でした。

土地の借主である店舗所有者は、板囲いを強引に撤去・破壊しました。そこで土地の貸主は、店舗所有者に対して、板囲いの撤去・破壊に関する損害賠償等を請求しました。

最高裁は、私力の行使(=自力救済)は原則として禁止されているものの、違法な権利侵害に対して現状を維持することを不可能または著しく困難とする、緊急やむを得ない特別の事情がある場合のみ、必要の限度を超えない範囲内で例外的に許容され得るとしました。

しかし本件においては、店舗所有者がすでに旧店舗へ復帰して営業を再開しているなどの事情から、板囲いの撤去を行うべき緊急の事情が認められず、法律に定められた手続きによるべきであると判示しました。

その上で、貸主側の損害賠償請求等を認容した原判決を支持し、店舗所有者側の上告を棄却しました。

一般的に私有地の無断駐車は、たとえ放置したとしても、私有地所有者が直ちに著しい損害を被るものではありません。そのため、レッカー移動などの自力救済は認められないと考えられます。