私有地などへの無断駐車にはどう対抗すればいいのか。弁護士の阿部由羅さんは「SNSでは自分の車をギリギリまで横付けする『仕返し』の動画を見かけるが、むしろ相手から損害賠償請求される恐れがある。司法手続きを踏まない『自力救済』は避けたほうがいい」という――。

無断駐車は「犯罪」に当たるケースが少ない

私有地への無断駐車は、法律に基づく対処が難しい問題の一つです。

「レッカー移動してしまえばいいのでは?」
「自分の車を横付けして出られないようにしたらどうか?」

いろいろな対策が思いつきますが、法的にはどこまで認められるのでしょうか。

本記事では、私有地に無断駐車する迷惑車両への対処法について、法的な観点から解説します。

1.私有地への無断駐車は犯罪か?

私有地への無断駐車について対処が難しい理由の一つは、犯罪に当たるケースが少ないため、警察の捜査が及びにくい点です。

私有地への無断駐車のうち、ごく一部のケースでは住居侵入罪などが成立しますが、大半のケースは犯罪ではなく、不法行為が成立するにとどまります。

警察
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無断駐車が罪に該当するケース

1-1.住居・邸宅・建造物の敷地への無断駐車:住居侵入罪などに当たる

正当な理由がないのに、人の住居または人の看守する邸宅・建造物(・艦船)に侵入する行為には住居侵入罪などが成立します(刑法130条)。

住居侵入罪の対象となる住居・邸宅・建造物には、それに付属する囲繞地いにょうち(※)も含まれると解されています(最高裁昭和51年3月4日判決)。

※囲繞地:建物に接してその周辺に存在する付属地であり、管理者が門塀などを設置することにより、建物の付属地として建物利用のために供されるものであることが明示されているもの。

したがって、一般的な住居・邸宅・建造物の敷地への無断駐車については、住居侵入罪などが成立すると考えられます。

この場合、被害届の提出または刑事告訴をすれば、犯罪として捜査してもらえる可能性があります。