節約を進言するFPに父親は怒り爆発したワケ

働けない子供の生活設計の相談を受けた際には、子供が親の資産で暮らしていけるように、いろいろな方策を検討してご提案しています。効果が大きいものとしては、本人が働けるようになることですが、当然誰もが望んでいることですので、ここでは置いておきます。

障害年金が受給できれば、大きな改善効果が見込めますが、今回は当てはまりません。自宅を売却して資金を得ることも選択肢となりますが、その後の住まいをどうするかという問題を解決しなければなりません。今回のケースでは自宅を売却してもそれほど効果はなさそうです。

それから、あまり積極的にはお勧めしないのですが、相続の際の兄弟姉妹での遺産分割の割合を調整するという方法もあります。相談者の長男は一人っ子ということですので、これも使えません。

「少し生活費を抑えてみるのはどうでしょうか?」

シミュレーションを操作してみると、毎月の支出を3万円抑えると、将来の状況は大きく変化しました。貯蓄が底を突くのがご長男が80代に入ってからで、不足額も最大200万円程度におさまりました。

【図表】将来の家計の状況
筆者作成

「毎月の支出を3万円抑え、“その他の支出”も年10万円減らすように努力してみましょう(支出額は3人暮らし:年296万円→250万円、2人暮らし:175万円、ひとり暮らし:105万円)、これでかなり状況は良くなりますね。それでもシミュレーション上では少し不足となりますが、このぐらいであれば誤差の範囲内です。月3万円の節約とはいっても、減らせないものもありますので、決して簡単なことではありませんが、まずは支出の見直しから始めてみませんか」

私が操作しながら、説明を続けていると、突然父親が怒鳴り始めました。

「それじゃあ、話にならん。『節約をしろ』だって。それだったら、だれでも言えるじゃないか。あんた、専門家なんだから、もっとなんか、うまい方策を教えてくれんのか」

どうやら父親は、私に相談することで、劇的に状況が改善する方策を教えてもらえると思っていたようです。私のアドバイスが「節約」で、それでも不足するという状況でしたので、イライラが爆発したようです。

「期待したような提案でなかったのなら、申し訳ありません。しかし……」