ビジネスシーンにおいて「英語はツール。できて当たり前」という風潮は強まる一方。英語弱者にはもはやチャンスはないのか。AI翻訳研究の第一人者として知られ、『ChatGPT翻訳術』を上梓した立教大学教授の山田優さんは「日本人の英語は“流暢性”に問題がある。ChatGPTを活用することで、英語力の差を埋められる可能性はある」という──。

従来の機械翻訳では「伝わる英語」なのかがわからない…

「私たちは同じ釜の飯を食った仲だ」

たとえば、この文章を英語で友人に伝えたいとします。パソコンやスマホで機械翻訳に入れてみましょう。出てきた答えは、“We all ate from the same pot”。

──これは本当に伝わる英語なのか? 誤訳ではないか? というか、私は英語力がないから判断できない。そもそも英語アレルギーなのだ……。

たちまち行き詰まってしまいます。これは、従来の機械翻訳の限界です。結局のところ、機械翻訳の英語が正しいのかどうかを判断するためにも、使う人の側に英語力が求められるのです。

これは、ある意味で、矛盾で悪循環です。たとえるなら、自動運転が安全運転できているのかを確認するために、運転免許証を持った人間のドライバーが見張っていなければならないような状況です。

ChatGPT、Bing、Google
写真=iStock.com/Kenneth Cheung
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ChatGPTは最良の英語パートナーになる

しかし、大規模言語モデルはまったく違います。とくにChatGPTでは、出てきた英語が通じるのかどうかを、日本語で質問をしていてみればよいのです。

以下のようにプロンプト(指示)を出して質問してみましょう。

[質問]
「私たちは同じ釜の飯を食った仲だ」という日本語の表現を英語話者の友人に伝えるのに、ある機械翻訳は“We all ate from the same pot”と訳しました。これは通じるのでしょうか?

[回答]
「私たちは同じ釜の飯を食った仲だ」という表現は、日本語の特有の慣用句であり、直訳すると英語話者にその深い意味が完全には通じない可能性があります。この表現は、単に同じ食事を共有したという意味だけでなく、同じ経験や苦労を共有して、仲間意識やきずなを深めたという意味も込められています。
 

したがって、“We all ate from the same pot”では、その精神的な側面まで表現しきれないかもしれません。もし、このフレーズを英語で表現するなら、“We've been through thick and thin together” や “We've shared the same hardships”といった表現が近いかもしれません。
 

これらの表現は、共に経験や苦労を共有し、絆を深めたことを意味しますので、言いたいことをより正確に伝えられるでしょう。

たとえば、こんな答えを返してくれるでしょう。