とはいえ、ウクライナ兵士による実戦での使用は限定的なものになるかもしれない。「マントのマスキング特性は、マントを着用した人が非常にゆっくり動く限り、永続的に維持される。例えば、起伏が多い場所を素早く移動するときなどと違い、体から余分な熱が放出されないためだ」とボリアックは説明する。

「このマントは、ゆっくり体勢を整えることを前提に使用するもので、急激な動きには適していない。体から余分な熱が放出され、マントの通気口からわずかに熱が漏れ出すためだ」。ただし、着用者が周囲の植物に紛れていれば、危険な熱の漏れは多少隠すことができる、とボリアックは補足した。

戦争が急速なイノベーションを促している

ロシアによる本格的な侵攻は、技術と戦術の急速なイノベーションを促している。また、西側の先進的な軍装備品が徐々に導入されていることで、さらにイノベーションに拍車が掛かっている。今回の新しい熱対策技術はウクライナ軍に、夜間の戦場における優位性をもたらす可能性がある。現在、さまざまな種類のドローンがほぼ常時監視活動をおこなっており、高度なカメラを搭載するものもある。

「『善』と『悪』は常に隣り合わせだ。新しいタイプの兵器と、それを打ち負かし、無力化しようとする手段の戦いもそうだ」とボリアックは話す。「だからこそわれわれは、何かを達成したとしても、そこで立ち止まることはない」

ボリアックによれば、現在の計画は「製品を改良し、開けた場所での素早い動きに対応させること」だという。「ほかの科学者たちと協力し、その方向で研究を進めている。年末までには、カムフラージュ効果を高めた新型マントの本格的なテストを実施する予定だ」

「新型マントのマスキング特性をさらに拡大するには、この製品に使用される新素材のテストが終わるまで、少し待つ必要がある」

(翻訳:ガリレオ)

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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