1000日以上乗っているという人もいる

出航してすぐ気づいたことがある。それは、クルーズは飛行機よりずっと階層がはっきりしているこということだ。

これがメダリオン
これがメダリオン(筆者撮影)

DP号の場合は、いつも身に着けていないとならない「メダリオン」というメダル型端末の色で、しっかりと階級が分かれていた。ネックレスやウオッチ型ベルト、バッジ型など、身に着けられるウェアラブル・デバイス。すべては非接触で、チェックインから始まり、船内の飲食物のオーダーや客室のドアの解錠などさまざまなサービスを利用することが可能だ。GPS搭載なので迷子になってもすぐ居場所はわかる。実際メダリオンを落とした夫は、位置情報ですぐに見つけることができた。

メダルの色が白の私たちは初心者クラス。2~3回乗ればゴールドメンバー……最後はエリートメンバーと呼ばれ、16回以上もしくは151泊以上乗船したものがブラックのバッジを身につける人になる。

サウナで会った老婆は、「何回乗ったかって? 数えきれないわね」と静かに言い、「あら、1000日以上乗っているという人も今回乗っていたわよね」と親しげに別の老婆に話しかけた。どうやら、船の中で船友ができるようだ。一度顔見知りになれば、自然と「次回ご一緒に」となる。クルーズの主のような存在のマダムがあちこちに潜んでいる。

下船することなく4クルーズ続けて乗っている人、「孫の誕生日には降りないとね」というマダム、「1カ月犬を置いてきちゃったからそろそろ戻らないと」と言っていたマダム、などなど。なんなんだここは。

プールで会ったシカゴから来たという70代の台湾人夫婦も、何クルーズか続けて乗っていて、来月もまた乗るとのこと。「船に乗っていると夫婦喧嘩がないからいいのよ」と奥様。掃除も洗濯もご飯も作らなくていいから、というのが最大のポイントだ。夫は元レストラン経営者で、今は余生をのんびり楽しんでいるようだった。

モーニングデッキにて
筆者撮影
デッキにてモーニング

今回乗ったDP号の航海時期がシルバーウィークということもあり、日本人が多く、ほぼ満室で約2700人も乗っていた(日本2073人、アメリカ203人、フィリピン188人、台湾81人、オーストラリア63人、クルー1100人)。若い世代も家族連れもいれば外国人も多くみかけた。

日本ではまだあまり知られていないが、外国船の中には18歳未満の子どもは、無料というクルーズもあるという。DPは無料ではないけれど、早割や家族割などがあってうまく予約すればすごくリーズナブルだ。

われわれは、春頃予約して、説明会にも夫婦で参加して、知人からクルーズで着てほしいと譲り受けたドレスを船内で着用するためにダイエットにも励み、身も心も準備を進めてきたが、あっという間にクルーズの日はやってきた。待ちに待った遠足、心を駆り立てるように旅行会社からは、乗船の手続きや、トランクにつけるタグ、船の中でどう過ごすかなど、お知らせが届く。携帯にダウンロードしたアプリからも、出航まであと○日と○時間○分とカウントダウンが始まる。