ボロボロの赤字経営になっているか

こうした「独立の法則」は社員だけでなく、FCオーナーにも当てはまるはずだと僕は考えていました。

何より僕自身が「自分のやり方」で勝負をしたくて、最初に就職したお店を離職しているわけですから、できる人というのは、やはり「自分の力」を試したがるものなのです。

だからこそ、「やる気があって、そこそこの実績もあって、お店の業績を伸ばしてくれそうな人」は、ディアーズのFCオーナーには絶対にそぐわないということが、僕には明確に分かっていました。

ですから、そうした人たちとは「正反対の人」を僕はFCオーナーにしようと考えました。

失礼を承知で、具体的に言うと、次のようなタイプの人たちです。

■ボロボロの赤字経営になっている
■そろそろ美容室を畳もうと考えている
■人生に疲弊し切っている

そうした方こそが、ディアーズのFCオーナーにふさわしいと考えました。

すでに経営状態が火の車であれば、ディアーズのブランド力を気にする余裕もないはずです。

そこで、次の課題になります。

では、そうした人たちを集めるには、いったいどうしたらいいのでしょうか?

深夜に届いたメール「死ぬことを考えています」

そこで僕が考えたのは「美容室」「赤字」「撤退方法」などのキーワードを使って、ブログなどで記事を書くことでした。

記事の最後に、僕は必ず次のような文言を付け加えました。

「赤字で撤退を考えている人は、ぜひ一度、ご相談ください」

すると、言わば「瀕死ひんし状態の人たち」から「もう死にたい」といったリアルで悲痛なメールがたくさん届くようになりました。

暗い場所でスマホを使用する人の手元
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

そしてブログを書き始めて、ある日のこと。

深夜に、ある男性から次のようなメールが届きました。

「今日、北原さんに相手にしていただけなかったら、もう先がないので、死のうと思います」

驚いた僕は、急いでそのメールを書いた男性が住んでいるエリアに向かおうとしたのですが、とうに終電の時間は過ぎています。

そこで車を飛ばして、彼が住んでいるエリアに向かいました。

現地に着いた頃には夜中の2時を過ぎていましたが、彼とはそれから朝の5時ぐらいまで、ゆっくり話をすることになりました。

いざ話を聞いてみると、奥様の反対を押し切って自分の美容室を開業したものの、うまくいかず、親戚からもいろいろと言われて、家に居場所がないとのことでした。

彼との会話で印象的だったのは、次のような言葉が出てきたことです。

「北原さん。人間って本当に困ると、おなかが鳴っても、おなかがすかないんですね……。寝たくても、全然眠れないんですね……」

僕が思ったのは、「このまま放っておいたら、この人は本当に死んでしまうのではないか」ということでした。それほどまでに、彼は疲弊し切っていたのです。

だから、僕は言いました。

「もしよろしければ、お店の看板を変えてみませんか? どうせ撤退するなら、3カ月間だけでいいので、僕に運転させてください。それでダメだったら、うちの社員にします。借金も一緒に返していきましょう」

すると、彼は「ぜひお願いします」と言ってきました。

こうして深夜に突然メールを送ってきたこの男性が、記念すべきディアーズのFC1号店のオーナーになったのです。