アメリカ宇宙局(NASA)や軍隊で任務中の発作を予防するために膨大な予算をかけ研究が行われている尿管結石。岡山大学医学部の中尾篤典教授が、その画期的な治療法を見つけようと米国の大学が手掛けたビッグサンダーマウンテンの研究結果(2018年にイグノーベル医学賞を受賞)を紹介する――。

※本稿は、中尾篤典・毛内拡(著)、ナゾロジー(協力)『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

おしっこにまつわる謎・尿管結石の新しすぎる治療法

少し汚い話ですが、次はおしっこと膀胱ぼうこうの話です。

尿管結石は、腎臓から膀胱までの尿が通る管の中に石ができる病気です。石が詰まることで腎臓で作られた尿が出なくなり、腎臓が腫れて大変な痛みが出ます。救急外来でよく見られるありふれた疾患で、ライフスタイルや遺伝等も影響するといわれていますが、実は未だにはっきりとした原因はわかっていません。

その痛みは激烈で、原因としては骨から溶け出したカルシウム成分や脱水、長時間の同じ姿勢、激しい運動などが推測されています。アメリカ宇宙局(NASA)や軍隊では任務中の尿管結石を予防するために膨大な予算で研究が行われているそうです。

アメリカにはオーランドのディズニーランドでビッグサンダーマウンテンに乗った後で尿管結石が出てきた、と自慢する患者さんが多くいるようです。

これが本当なら、画期的な治療法が見つかるかもしれない、と自らジェットコースターに乗って尿管結石を治療するという研究を真面目にやった人たちがいます。

2016年にミシガン州立大学の研究者たちが発表した論文によれば、研究グループは患者さんから実際に出た3つの異なる大きさの結石を用意し、その結石をシリコンで作った腎臓のリアルな模型に入れさらにそれをバックパックに入れ、ビッグサンダーマウンテンに自ら20回ずつ乗り込んで実験しています。

最初は模型ではなく、牛や豚の腎臓を使っていたそうですが、家族で楽しむアミューズメント施設には不適切だということで、許可されなかったそうです。結果は、先頭座席では排石率が12.5%前後であったのに対し、最後部では63.9%の結石が出たそうです。結石は5mm以上の大きさになると、痛みや疼痛が出たり、手術が必要になってきたりしますが、研究グループはジェットコースターにより、この大きさになる前に石を取り除くことができると主張しています。

このほかにも、乗馬や、インドに伝わる特殊なヨガがいいという報告もあります。いずれも尿路が揺さぶられ、振動やGの力を利用して石を動かし、通過を促進して石を出すという考え方です。ちなみに、このビッグサンダーマウンテンの研究は2018年にイグノーベル医学賞を受賞したそうです。