安倍晋三総裁率いる自民党の新体制がスタート。早期解散を目指す安倍氏に対し、野田佳彦首相は民主党幹事長に早期解散・総選挙に反対の輿石東氏を留任させるなど、総選挙先延ばし路線が鮮明だ。今後の政局がどう展開するかを、政治ジャーナリストの山田惠資氏に聞いた。

政局を予想するうえで、山田氏が注目するのが総裁選での地方票(党員票)の動き。総裁選で安倍氏が獲得した地方票(党員票)はわずか87票。一方、安倍氏との決戦投票で逆転負けした石破茂氏(安倍体制で党幹事長に就任)は約2倍の165票を獲得した。

「党員の感覚が一般国民に近いとすると、安倍総裁では自民党の支持率はあまり上がらない可能性がある。もし総選挙が来年に延び、自民党の支持率が上がらないどころか下がった場合、自民党の地方組織を中心に“安倍氏では選挙を戦えない”として、党員に人気がある石破氏の待望論が出てくるかもしれません」

同じタカ派とはいえ、安倍・石破氏の関係はよくない。伝統回帰的で情に動かされやすい安倍氏に比べ、石破氏は理屈っぽく、議論で相手をやり込めるタイプ。総裁選で国会議員票が石破氏にあまり集まらなかったのはそのせいだ。

「安倍氏の支持率が上がらず、地方組織の不満が高まれば、石破氏が安倍降ろしに走ることも。安倍氏が石破氏を幹事長に据えたのは、挙党一致態勢をつくることに加え、石破氏の動きを牽制するという意味合いもあるでしょう」

党内抗争で石破氏が離党し、以前から「一緒にやりたい」と言ってきた民主党の前原誠司氏と新党を旗揚げする可能性もあるはず。そんな事態を避けるには早期解散・総選挙に追い込むしかない。

方法は、野田内閣不信任案を衆院に提出、可決成立させることだが「その場合は、首相は解散でなく内閣総辞職し、人気のある細野豪志氏にバトンタッチするかもしれない。細野氏が相手だと、安倍氏では選挙に勝てないとして、石破氏が安倍降ろしに動くことも考えられる」。

では早期解散・総選挙が行われ、安倍政権が誕生した場合はどうなるか。

「安倍氏は橋下維新とパイプがあるが維新は参院に議席がなく、維新と連立を組んでも衆参のネジレはなくならない。衆院選挙で維新が躍進しても、安倍氏はまず公明党との連立を優先するはず」

すべては安倍氏の人気次第だ。

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