先が読めない世の中を、逞しく生き抜くにはどうすればいいか。吉本興業前会長で実業家の大﨑洋さんは「地方創生の分野で師事する清水義次さんから、『生き抜く力を身につけるには、技能4教科に加えて道徳を自然の中で学ぶことだ』という言葉を聞いて目から鱗が落ちた」という。千船病院の吉井勝彦院長との対談をお届けする――。
※本稿は、千船病院広報誌『虹くじら 03号』の一部を再編集したものです。
死ぬまでに1つぐらい、いいことしなきゃいけない
【吉井勝彦(社会医療法人愛仁会 千船病院 院長)】大﨑さん、いきなりなんですが、こちらから質問してもいいですか? 大﨑さんの著書『居場所。』(サンマーク出版)を読ませて頂きました。会長を務めておられていた吉本興業には“定年”がないと書かれていました。それにも関わらず、4月末に吉本興業を退社されました。この理由をお聞きしたいです。
【大﨑洋(実業家、吉本興業前会長)】芸人さんも年を取っていきます。それに寄り添う社員がいてもいい。年齢で区切らなくてもいいんじゃないかと思って、定年を廃止したんです。ぼくも元気なうちは会社にいるつもりでした。ただ、どこかでスパッと辞める方がいいんじゃないかなという思いもありました。
とはいえ、そもそも、自分は何をしたかったんやろうと考えたんですが、何も出てこない(笑)。辞めても何もできないしなぁ、と。
【吉井】(手を振り)そんなことはないでしょう。
【大﨑】死ぬまでに1つぐらい、いいことしなきゃいけないじゃないですか。硝子細工のように繊細な若者に寄り添う、あるいはシングルマザーで困っているお母さんや子どもたちの力になれないか。
彼ら、彼女たちに向き合う、あるいはサポートを出来るシステムを作ったらどうだろうって考えたこともあります。人生の残りの何年間で何が出来るだろうって、1年ぐらい悩んでいたとき。万博の打診が来たんです。
【吉井】そして、大阪・関西万博催事検討会議の共同座長に就任された。
【大﨑】熱心に誘ってもらいました。しがない漫才師のマネージャーですが、ありがたく受けさせていただきますということになりました。