「幸か不幸か、辞めてから2週間ほどで転職先が決まっていたので、それ以上もめたくなかった」
しかし、その新天地は紛うことなき“ブラック会社”だった。
「2ちゃんねるでボロクソに叩かれていたのは、入社直後に気づいた。チェックしておくべきでした」
もう1社からの誘いは断ってしまっていた。後の祭りである。
「当初は前職と同水準の年600万円ほど貰っていたんですが、その矢先に赤字転落。以後、業績は悪化の一途です。昇給はおろか、手取りは減る一方。仕事でミスするたびに引かれる仕組み。やられた、と思いました」
毎朝1時間、どんなに忙しくても全社員が職場の掃除を強いられる。土・日は出勤が普通だが日当ナシ。1年経って年収は半減。ボーナスは一度も貰っていない。
「いつ潰れてもおかしくない状態です。社内はパワハラ全開。ミスして坊主頭にさせられた人があちこちの部署にいます。『絶対に潰さない』と社長は息まいてますが、その前に人が潰れてしまう」
もともと組合はない。昨年、タイムカードが突然なくなった。土・日のコンビニバイトの許可を求めたが、経理担当者は「ダメとしか言えません」とすげなかった。
「かみさんは看護師。介護施設を転々と回っています。月いくら貰っていたかなあ……。私ももう、この歳で転職は難しい。このままいくしかない。預貯金はゼロ。ちょっとでも倒れたら……」
今は、安らぐ暇などない。
※すべて雑誌掲載当時
(初沢亜利=撮影)