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出所:日本経済新聞社

上のために働くのは当然だが、パフォーマンスを上げるには「下のために働く」ことを忘れてはならない。たとえば次のようなことだ。

自分の部署に閉塞感が出てきたようなときに、上司自身が部下の目線に降りて「どうしたらいいと思う?」と話しかければ、部下はぽつぽつと意見を出してくる。そういったコミュニケーションがひんぱんになってくると、しだいに「あの人と一緒に仕事をするとおもしろい」「意見を聞いてくれる」という雰囲気が醸成される。すると人望が集まり、必ず仕事の成果もついてくるのだ。

では、部下と話し合うときは、どんなテーマがいいだろう。私が新任管理職にアドバイスしているのは、「とりあえず残業の撲滅から行ったらどうか」ということだ。

いま多くの会社員が重視しているのは「年次有給休暇の取りやすさ」や「実労働時間の適正さ」である(表参照)。夜8時までの残業が常態化しているようなところでは、短時間でパフォーマンスを上げるような仕組みを考えていくことで、部下たちの負担感が減り、働きやすい職場になる。事実上サービス残業になっているとしたら、なおさら効果が期待できる。

「どうしてうちはみんな毎晩8時まで残っているんだろう。どうしたら残業時間が1時間減るか、みんなでちょっと話し合わない?」

こうやって話し合っていくことで、働きやすさが改善するし、単位時間の生産性も向上する。また、次のような本音も引き出すことができるかもしれない。

ある会社では、多忙な時期は残業が増えるのも仕方がないが、そういうときに「遅くなったね、でも頑張ってるね」とねぎらってほしいという意見が出たという。

それで残業時間が減るわけではないが、一言の気遣いが大事なのである。さらに進んで、8時まで残業が続くとしたら、途中の6時ごろに上司が甘いお菓子でも差し入れするようにしたら、とても雰囲気がよくなったという報告もある。

※すべて雑誌掲載当時

人事コンサルタント 本田有明(ほんだ・ありあけ)
1952年、兵庫県生まれ。慶応大学哲学科卒業後、日本能率協会を経て96年に独立。著書に『本番に強い人、弱い人』(PHP新書)、『いつも「結果」が出せる人の仕事術』(PHP文庫)など。
(構成=面澤淳市 写真=和田佳久)
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