種族5:上の方針をそのまま下に伝える人、翻訳能力の欠如した人も、それ以上の出世は望めない。上との関係を重視するあまり、同僚や部下との関係をないがしろにしているからだ。

経営トップは刻々と変わる為替レートなどの状況から、朝立てた戦略を夕方にはもう見直さなければならない場合がある。では、現場はそれを受けてどう動けばいいのか。

たとえば大方針の変更があったとき、部課長であれば、現場が具体的にどう対応したらいいかを自分の言葉で説明しなければならない。そうしないと現場のモチベーションを保つことは難しいからだ。だが、最近はそうした言葉を持たない上司が増えている。

つい言ってしまう“NGワード”とは?

人事コンサルタント
本田有明氏

実際、こんなアンケート結果がある。会社が急に方針転換を打ち出したときに「どうしてそうなるんですか?」と上司に質問すると、高圧的に「上の方針だ。いわれたとおりにやればいいんだ」とだけいわれて、それでおしまい。そのことに対する不満は意外に大きいのである。

上司自身が決定の事情をよく理解していない場合もあれば、理解していても噛み砕いて伝えることができない場合もある。いずれにせよ、自分のチームを活性化しようという意識が希薄であることが問題だ。

本来なら、自分も理解していないときは「申し訳ないけど、俺もわからないんだ」といい添えればいい。それだけでコミュニケーションはずいぶん円滑になるものだ。しかし、最近の上司は沽券にかかわると思い込んでいるのか、その一言がいえないのだ。

そればかりか、ついうっかり、逆効果にしかならない次のようなセリフを漏らしてしまうことが少なくない。

「いいから、黙って働け」

「そんなこというヒマがあったら、ほかにやることがあるだろう」

「おまえの意見は聞いてない」

これらはコミュニケーションを完全にシャットアウトする言葉である。とくに「おまえの意見は聞いてない」となると、いわゆるホウレンソウのうちのソウ(相談)に応じないことになってしまう。

自分ではそういっておきながら、「うちの奴らはホウレンソウをきちんとやらない」と嘆いたりするので厄介だ。むろん部下の本音は「あの人に相談しても聞いてくれないんだからしょうがない」。こうなってしまっては、お互いに不幸である。