「部長と刺し違えてもいい」と思う

私は顧問先で部課長向けの研修をするときに、あらかじめ部下から聞き取り調査を行うようにしているが、4~5年前から次のような声を耳にするようになった。

「私が辞めるか、部長が辞めるかのどちらかです。刺し違えてもいいと思っています」

まことに激越な言葉である。ところが、上司自身にはまるで自覚がない。

人事コンサルタント
本田有明氏 

調査結果を受けて部課長本人に「あなたの部署はこういう現状ですよ」と伝えても、「他の部署と間違えているのでは?」となかなか納得しない。やがて事実だとわかると、今度は「誰がそんなこといったんですか!」と怒り始めるのだ。

もちろん発言者の名前を教えるわけにはいかないが、このとき上司の頭には「自責」の2文字は存在しない。彼のなかでは反発を覚える部下のほうが100%悪いのである。

そもそも、課長クラス以上になったときに一番重要なのは「自責の念を持つ」ということだ。たとえば部署内に伸びない部下が多い、残業が多い。こういうことはすべて管理職の責任である。どう解決するかは、まず自分の責任として考えなければならない。もちろん誰かに相談してもいいが、リーダーになっていく人にはそうした責任感が不可欠なのだ。

ところが彼らは、組織の問題が表面化しても「出来の悪い部下をあてがわれたから成績が伸びない。いい迷惑だ」と開き直り、すぐに責任転嫁をする。

この手の人は、係長・主任レベルになり、ほんの3~4人のチームを組んで仕事をするという段階になると、早くもギクシャクした雰囲気をつくってしまう。プレーヤーとしては実績があるから必要以上にプライドが高く、できない人との連帯感を持てないのだ。

さすがに会社側も問題点に気づいているので、今後は管理職に引き上げる際に、このようなタイプは慎重に避けるようになるだろう。だから「人気のない人は出世できない」のである。