同族経営は強みもあるが、裏目に出ると非常に危うい
同族企業に詳しい経営学者の中川功一さん(「やさしいビジネススクール」学長)は、こう分析する。
「ジャニーズ事務所は典型的な同族経営と言えます。ただ、経営者が株を全て保有しているのは、資金繰りなどが順調で、需要(外部に株を買ってもらう必要)がなかったということもあるでしょう。老舗企業が多く、また長らく銀行借り入れが資金調達の主力手段であった日本においては、創業者一族が多くの株式を持ったまま継承しているケースが多い。株主の分散が進みにくかったゆえに、同族経営のデメリットである『私物化』が起こりやすい構造になっていると思います」
中川さんによると、同族経営のメリット・デメリットは表裏一体で、「会社を所有する人と経営する人が一致」するため、会社の長期存続を真剣に考えるという利点がある一方、社長やその親族によって「会社をまるで自分のオモチャのように私物化する」ことが起こりがちだという。
みずからの性的快楽のため、芸能事務所の看板を悪用して少年たちを毒牙にかけていたジャニー前社長は、まさに究極の「私物化」をした経営者ではないか。
前社長は会社を私物化して性加害、姉が隠蔽してきた
そして、その私物化(性的加害)が早くは1960年代から告発され、暴露本も複数出版され、1990年代の週刊文春による一連の報道があったにもかかわらず、事務所内でジャニー前社長を止める動きは、彼が87歳の天寿を全うするまでついに起こらなかった。報告書はこう分析している。
「メリー氏は遅くとも1960年代前半には、ジャニー氏の性嗜好異常を認識していたとするのが蓋然性の高い事実であると考えられる。したがって、メリー氏は、ジャニー氏の性嗜好異常と、それによる少年たちへの性加害が続いていることを知りながらも、その行為を否認し改めようとしないジャニー氏の行動を止めるのを断念したことで、結果として放置する形となり、外部に対してはジャニー氏を守り切るために徹底的な隠蔽を図ってきたものと考えられる。このように、ジャニー氏の性加害に対して、メリー氏が何らの対策も取らずに放置と隠蔽に終始したことが、被害の拡大を招いた最大の要因である」