「世紀の番狂わせ」もあのビジョンから生まれた

日本代表のワールドカップ初戦、圧倒的に下馬評の高かった南アフリカとの対戦は、私が関わったラグビーの国際試合のなかで2番目に完璧に近い試合になった。日本代表は、2019年にイングランドがニュージーランドを破ったのとはまったく違う形でスプリングボクスを驚かせた。

試合前、選手たちには明確な課題を与えた。試合開始から60分経過時点までは、勝利の可能性が残るスコアを何としても維持すること――。そうなれば、スコアボードが我々に有利に働いてくれるはずだ。勝って当然と見なされている南アフリカはプレッシャーにさらされる。そこに我々のチャンスがある。

エディー・ジョーンズ『LEADERSHIP』(東洋館出版社)
エディー・ジョーンズ『LEADERSHIP』(東洋館出版社)

ゲームは実際にプラン通りの展開で進んだ。試合終了間際、ペナルティキックで引き分けに持ち込もうとするのではなく、勝ち越しトライを奪いに行き、実際にトライを決めた劇的な勝ち方は、まるでおとぎ話の世界の出来事のようだった。それでも、この34対32の勝利をもたらした原動力になったのは、紛れもなく我々が最初に掲げたビジョンだった。

日本で開催されたワールドカップの2019年大会、日本代表の位置づけは大きく変わっていた。開会式のハイライト映像で放映された日本が勝利を収めた4つのシーンは、この国のラグビーがここまできたということを物語っていた。

ご存じのとおり、日本は母国開催のワールドカップで準々決勝まで勝ち進んだ。私は7年前にビジョンを掲げたことで、このストーリーに少なからぬ貢献をしたと自負している。大きな夢を持てば、特別なことを成し遂げられ、周りの世界を驚かせることができると示したのだ。

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