相場の底はまだ先かもしれない
共産党政権は、価格の水準に応じて住宅購入者向けの規制を調整しつつ、基本的には不動産などの投資を強化した。それによって高成長の維持を目指した。その結果、中国のマンションなどの価格は上昇間違いなしという根拠なき楽観は広がり、投機熱が高まった。経済全体で借入(レバレッジ)も膨張した。
過度な成長期待を背景に、デベロッパーはビルやマンション建設を増やした。土地譲渡益を財源に地方政府はインフラ投資を打ち出し、経済成長率を押し上げた。不動産価格は上昇し続けるという過度な強気を支えに、一般企業も産業補助金を手に入れつつ設備投資を増やし、雇用と所得の環境が下支えされ、わが国の工作機械需要も盛り上がった。
しかし、いつまでも資産の価格が上昇し続け、経済が高い成長を維持することは困難だ。3つのレッドラインをきっかけに不動産バブルは崩壊に向かいつつあると考えられる。恒大集団の現状を見る限り、相場の底はまだ先かもしれない。
“中国脱出”で共産党の求心力低下は必至
足許、投資依存の経済運営の行き詰まりに加え、台湾問題など地政学リスクの高まり、共産党政権の政策不透明感、人件費高騰などを理由に中国から脱出する企業も増えている。共産党政権は金融の緩和や不動産関連規制の緩和によって景気を下支えしつつ、為替介入や株式市場のテコ入れ(印紙税の引き下げや新規株式公開の制限など)を矢継ぎ早に実施したが、目立った効果は出ていないようだ。
今後、“灰色のサイ”と呼ばれる中国の債務問題は深刻化し、財政破綻に近い状態に陥る地方政府も増える可能性は高い。返済能力を失い債務不履行状態に陥る企業や地方融資平台は増え、信託、および理財商品のデフォルト件数も増えざるを得ないだろう。
一方、中国国内では、理財商品などは政府が元本を守らなければならないというような考えを持つ人が依然として多いようだ。状況によって、共産党の求心力が揺らぐこともあるかもしれない。