不動産バブル崩壊が決定打に

2018年の年初以降、共産党政権が景気の過熱を抑えるために公共事業を絞ると、経済成長率は低下した。先端分野での米中対立で世界のサプライチェーンが寸断され、コロナ禍の発生もありわが国の工作機械受注は減少した。

2020年4月ごろから、中国経済は主要国に先駆けて一時持ち直しに向かった。2021年5月ごろまで、中国企業はテレワークなどの需要が急増したスマホや、パソコンなどの生産体制強化、さらには共産党政権が推進したEV普及策などを背景に工作機械を買い集めた。

ところが、2020年8月、不動産融資規制である“3つのレッドライン”が実施されたことは決定的だった。ゼロコロナ政策の長期化もあり、不動産市況は悪化しバブルが崩壊に向かった。建設や基礎資材の生産活動、雇用と所得の環境も軟化し始めた。それに伴い、わが国の工作機械への需要も減少した。

投資に依存した経済構造は限界にきている

3つのレッドラインの実施後、中国経済の減速は鮮明だ。投資に依存した中国の経済運営は限界を迎えつつある。大手不動産デベロッパーや、地方融資平台(地方政府がインフラ投資の資金を調達するために設立した投資会社)の債務問題は日増しに深刻化した。8月中旬、高利回り投資商品である信託商品のデフォルトも起きた。

8月下旬に発表された、中国恒大集団の決算にて監査法人のプリズム香港上海は、事業継続に不確実性があるとして意見を表明しなかった。元利金の支払い遅延の深刻化によって、財務内容を正確に評価することは難しくなっているようだ。

その背景には、不動産神話の崩壊というべき成長期待の失墜がある。リーマンショック後、世界的に超低金利環境が続くとの見方は増えた。より高い利得を求め、世界の投資資金は成長期待の高かった中国に流入した。当時、2050年に中国が米国に代わり世界トップの経済大国に躍り出るとの期待も強かった。