男余りなのに、なぜ正規女性の未婚率は高いのか

一方で、女性だけ正規雇用の未婚率が低く、男性は正規雇用であっても未婚率が高いのが北海道、東北から北関東にかけての東日本全体です。秋田などは婚姻率が全国最下位をずっとキープしていますので、これらはまさに正規雇用であっても男性が結婚できないエリアということができます。

非正規を正規に変えれば婚姻率はあがるはずというのは東日本の男性には通用しない理屈であって、ここには正規雇用であっても低年収という問題や、若い女性が就職とともに地元から流出してしまい「相手がいない」という男余り現象とも連動するものです。

結婚したくても、そもそもの未婚男女の絶対人数が不一致ならばマッチングするはずがありません。ちなみに、未婚男女で比較して男余りが激しいのも東日本であり、トップ3は茨城、栃木の北関東と東北の福島です。

反対に、男性は未婚率が低いのに、女性だけ正規雇用の未婚率が高いのは、愛知、兵庫、大分の3県のみとなります。こうして見ると、正規雇用の女性が男性より結婚しにくいということはなく、むしろ全国的に見れば男性のほうが未婚率が高いように思えるのですが、冒頭に書いたように、正規雇用では女性のほうが生涯未婚率が高いのはなぜでしょう?

シャッター通り
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結婚できない東日本の男性、大都市に住む女性

それは、一部のエリアが全体を押し上げているからです。男女ともに正規雇用でも未婚が多いのは、北海道、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、福岡の7都道府県。これらはすべて大都市です。

ちなみに、東京の女性の正規雇用の生涯未婚率は、33.5%にも達します。東京の正規男性が24.4%ですから、それを10ポイント近くも上回ります。大阪や神奈川、京都も30%超えです。女性の全体の正規未婚率が高いのは人口の多い大都市の女性の未婚率の高さによって形成されています。

同じ正規雇用でも、「東日本を中心とした男性が結婚できないエリア」と「大都市を中心とした女性が結婚できないエリア」とに明確に分かれます。もちろん、その中には「結婚したいと思わない」という選択的非婚の人もいるでしょう。一方で「結婚したいのにできない」という不本意未婚が男女とも4割以上いることも事実です。

そして、その不本意未婚のボリューム層は、正規雇用であるにもかかわらず、満足に手取りが増えない層の経済的要因であることもまた否定できません。

こういう話の際によく平均年収の数値で語る人がいますが、平均に意味はありません。実態を把握するには中央値を見るべきです。国民生活基礎調査に基づき、2022年の20代の可処分所得の中央値を計算すると約235万円しかありません。手取りが月あたり20万円もない20代が全体の半分を占めるわけです。当然、2000年と比べても減っています。