人間関係には「コツ」がある

かつて職場の人間関係に悩んでいた私を救ってくれたのが、経営学者の飯田史彦氏の著作『生きがいの創造』(PHP研究所)という1冊の本でした。

この中で飯田氏は、「この世は魂を成長させるための学校」であると述べ、人間がこの世に生まれてくる理由の1つは「人間関係を学ぶため」だと説いています。

また、自分の周囲にいる人は、成長のために自分で雇った俳優のようなものなのだそうです。

もし試練を与えてくる人がいたら、それは自分が生まれる前、その人にその役を依頼したから――いわば自分の成長のための協力者であり、ソウルメイトなのだといいます。

オフィスで一緒に働くビジネスコワーカー
写真=iStock.com/filadendron
※写真はイメージです

この考え方は、私にとって非常に意味のあるものになりました。

たとえ苦手な人であっても、自分のために自分で「試練を与えてほしい」と依頼した結果なのだと思うと、「この人はどういう人なのだろう?」と、自然と関心を寄せることができたのです。

そして関心を持って見てみると、いろいろな点が見えてきます。

見方が180度変わって大好きになれるような劇的なことはありませんが、

「これをやると、この人は怒るんだな」
「こういうと、この人は機嫌がよくなるな」

と、相手とのうまいつきあい方の「コツ」に気づけるようになるのです。

また、相手に関心を向けることで、相手からのトゲトゲしい言動がなくなっていくのを実感しました。

これをふまえた上で、今回は、セルフコーチングによって、人間関係がいまよりずっとラクになる方法をお伝えしていこうと思います。

あの人、この人の“トリセツ”をつくろう

「この人、苦手だな」
「この上司とは、気が合わないな」

と思った時点から、相手に向ける視線にはネガティブなものが含まれてしまいます。

負の感情を持って見れば、些細な言動にも嫌悪感が生まれてしまいますから、下手に関わり合いになりたくない、と思うでしょう。

これでは関係は悪化する一方ですし、相手に関心を寄せるどころではありません。

だから、

「この人の『トリセツ』には、どんな注意書きが書いてある?」

と考えてみるのはどうでしょう。

実際に、相手の扱い方の注意点をわかりやすく箇条書きにした取扱説明書――“トリセツ”をつくるつもりになって、相手を観察してみるのです。

「この人が、興味を持っていることはなんだろう?」
「この人が、私に期待していることはなんだろう?」
「この人は、どういうときに機嫌がよく(悪く)なるんだろう?」
「この人は、何が好きで、何が嫌いなんだろう?」
「この人が怒ったとき、どうすればうまく対処できるだろう?」
「この人と意見が違うとき、どういえば納得してくれるだろう?」

もしくは、過去にあった出来事を思い返してみるのもいい方法です。

「この人と、比較的うまく会話できたのは、どんなとき?」
「この人が、笑顔だったのはどんなとき?」

といった具合です。