ソ連軍の不法占拠が正当化されることはない
次に「9月2日を終戦の日とすると、ロシアに北方領土占拠を正当化する口実を与えることになるのではないか」という疑問について述べよう。
このように言う方は、単純に軍事占領イコール領土獲得と考えている方だろう。しかし、国際法では、当時も現在も、軍事的に占領しても領有は認められない。たとえ軍事的に支配できたとしても、当事国とその地域住民の意志に反して、領土とすることはできない。スターリンが加わったカイロ宣言でも、侵略によって奪ったものは返さなければならないと確認している。
したがって、9月2日に終戦の日を変えたとしても、ソ連が9月2日までに軍事占領した地域を領土とすることはできない。実際、9月2日に交わされた「降伏文書」は、領土問題については一切触れていない。決めたのは、ソ連などの国が「日本の降伏条件を定めた公告」の枠組みに加わること、その条件の下に戦争を終結させることだけである。どの地域にいる日本軍がどの国の軍隊に降伏し、武装解除を受けるかは指定しているが、領土については何も規定していない。
9月2日に調印した「降伏文書」にロシアの不法占拠を正当化できる文言はなにも書かれていないことが、終戦の日を9月2日にしてもロシアに口実を与えることにはならないことを示している。
「本当の終戦の日」は9月2日に変更すべき
以上述べてきたように、8月15日が終戦の日になったのは、日本というより占領軍の都合だった。そして、7年にわたる占領統治の間に、言論統制によって「8月15日イコール終戦の日」が固定化され、現在に至っている。
また、9月2日を終戦の日としても、「降伏文書」に領土規定がない以上、ソ連が軍事占領によって不法に占拠した南樺太と千島列島の領有を認めることにはならない。そもそも、ソ連の侵略は日ソ中立条約に反したものであり、ソ連を除く連合国の承認も得ていない国際法上違法なものだった。終戦の日付をずらしたところで、このことは変わらない。
8月15日以降のソ連軍の侵攻によって命を失った数万から数十万の日本兵、民間人、それらの遺族の心情を思えば、そして終戦の日のメディアイベント化が占領軍のプロパガンダだったことを思えば、そろそろ9月2日に変えてもいいのではないだろうか。