「嫌な奴ほど成功しやすい」は勘違い

1.「いい人」は必ずしも失敗するとは限らない

権力の座に就く著名人には、嫌な奴が多いからだろうか、嫌な奴ほど成功しやすいと思われがちだ。次のような三段論法があるが、これは事実とは違う。

成功する人はみな、不愉快で嫌な奴である。

成功できない人はみな、「いい人」である。

ゆえに嫌な奴になれば、パフォーマンスが向上する。

思いやりがある人か好感度が高い人、または穏やかな人である必要はないが、嫌な奴である必要もない。地位の高い人が嫌な奴であることが許されるのは、成功者とは得てして嫌な奴だと思われているからだが、実際にはそのような関連性はない。

いい人は成功しないと言われる。たとえいい人でも、計画性がない、スキルがない、リーダーシップがない、または協力者がいなければ、成功しない。だが、同じことは計画性のない嫌な奴にも言える。

計画性のない嫌な奴は、失敗するにとどまらず、仲間を見つけて関係性を維持するのも難しい。ましてや自分たちの戦略に全面的に尽力してもらうどころではない。

「いい」という言葉は無価値である

「いい」という言葉について、もう少し説明しよう。最初に言っておくが、わたしはこの言葉が好きではない。この本を読み進め、ここに書かれてある提案やアイデアを検討するうちに、うなずいて「ふうむ、これはいいアイデアだ。やってみよう。いい発想だな」などと思うかもしれない。

たとえば、わたしがこんな提案をしたとしよう。椅子に座って仕事しているときに、誰かが雑談か質問しにやって来たら、相手の方向へ椅子をきちんと回転させるべきではないか。ビデオ通話の場合は状況が異なるものの、ぼんやりと画面を見るのと、相手が映っている空間をしっかり見つめるのとでは違う。

オフィスで話しかける人
写真=iStock.com/Hybrid Images
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成功するには、仲間たちに真剣に関わってもらう必要がある。それはつまり、椅子を回転させて相手としっかり向き合うことであり、相手の話にたびたび頭を動かして反応することでもある。電子メールやエクセルを処理しながら、椅子を半回転させて会話することでも、うつろな目で対応することでもない。椅子を目一杯回転させて向き合うことだ。

さて、それを読んだあなたは「なるほど。これはいいアドバイスだ。お互いの話をもっと集中して真剣に聞き、みんなが強い絆でつながれば、何かが変わるかもしれない。椅子を回転させるのか。なかなかいい案だ。気に入った。互いにもっと良く接した方がいいと提案するなんて、この紳士的でやさしい巨人はいい人間になるためのいいアイデアを持っている。わたしたちももっといい人間にならないと」と思うかもしれない。

それは違う。そんな考えはすぐに捨てよう。「いい」というのは、言葉であれ、概念であれ、こと成功に関してはほとんど価値がない。