ドルとのリンクが外れた通貨など世界は見向きもしない。円暴落という事態になる。円での輸入は不可能になるし、ドルを仕入れるにも手段がなくなる。

ロシアがSWIFTから除外されルーブルがドルと交換不能になったのと同じだ。ロシアは原油のためにルーブル決済を他国に強要できるが、日本には貿易での円決済を強要させる武器は何もない。

債務超過とはいかに怖いものかを理解することは重要だ。黒田前総裁、植田総裁は、その怖さを十分に理解していると思う。それがゆえに屁理屈を並べてまでも利上げで債務超過になるのを回避しようとしてきた。ただ回避しようと思っても、今の日銀の財務状況ではかなり困難なのだ。ほぼ無理と言っていい。

財政・金融の専門家は“危機感”を共有している

ここまで財政の危機、特に日銀の危機について述べてきたが、どうも納得ができないという方もいらっしゃるだろう。しかし、以下のことを思い出していただきたい。それでも大丈夫と思えるだろうか。

一つは財務省の事務方トップ・矢野康治事務次官が、職を賭して『文藝春秋』(2021年11月号)に、日本の財政危機を訴える寄稿をしたこと。財政を日本で一番わかっていらっしゃる財務次官が「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いて、やむにやまれぬ大和魂がもうじっと黙っているわけにはいかない。ここで言うべき事を言わねば卑怯でさえあると思います」と財政の危機について述べられたのだ。

二つ目は、日銀マンにとって、垂涎の的のポジションのはずだった総裁職を日銀マン、元日銀マンは誰一人として受けなかった点だ。雨宮副総裁も、元副総裁の中曾宏氏、山口広秀氏も、さらに女性副総裁候補No.1と言われていた元日銀マン・翁百合女史もそうだ。昔は日銀と総裁職を激しく取り合った財務省OBさえ誰一人受けなかった。

これらはかつての日本では想像すらできなかった事態だ。そのことが今の日本の財政、日銀の窮状を明確に物語る。

自分の資産を守るために必要なこと

最後に、私が「ドルを買い、自分でご自身とご家族を守る必要がある」と繰り返し述べている理由を紹介する。

「ほとんどのドイツ国民は、慣れ親しみ信頼している通貨であるマルクを手放そうとしなかった。もうこれでマルクは終わりだという暴落が何度も起こってもそれは変わらなかった。マルクにしがみつく以外に選択肢がなかった者も多い」(アダム・ファーガソン『ハイパーインフレの悪夢』新潮社)

第1次世界大戦後のドイツで起きたハイパーインフレを記録したこの本を読んでいただきたい。今はまだ、円をドルに換えることができる。当時のドイツ国民の悲惨な経験から学びたいものである。

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