服装の自由は憲法が保障

そもそも、服装に関する自由は憲法第13条によって保障されている自己決定権と幸福追求権に含まれると考えることができます。

日本国憲法第13条では個人の尊重、幸福追求の権利を保障し、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めています。

誰もが持つ権利を、制服着用の強制によって制限するのですから、その範囲は「仕事をする上で必要な範囲」であるべきです。

「服務規程で頭髪の色を制限」は認められる場合も

裁判でも、企業が労働者の服装に制限をかけられる範囲は、「企業の円滑な運営上、必要かつ合理的な範囲内にとどまるもの」と判断された例があります。

東谷山家事件(福岡地判平9年12月25日判決)は、トラック運転手の頭髪の色が服務規程に違反しているとして行われた解雇の正当性が争われた事件です。

企業が服務規程によって労働者に一定の制約をかけることは認められた反面、その制限行為は無制限に許されるものではないとされました。

「服務規程で頭髪の色を制限」は認められる場合も(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/electravk
「服務規程で頭髪の色を制限」は認められる場合も(※写真はイメージです)

つまり、最低限、性自認に基づいた制服の着用を服務規程で定めることは認められます。

もし自分の性自認に一致する制服を着られないのであれば、私服勤務ができる部署に異動を願い出ることも現実的な選択肢になるでしょう。

話をしたらアウティングされそう、差別を受けそうだという懸念があれば、そのような会社からの転職をお勧めします。

残念ながらトランスジェンダーに対する社会の理解はまだ十分にあるとはいえません。言いたくなければ言わなくてもよいのです。

相談することも含め、その自由は当事者の側にあります。昨今はダイバーシティ&インクルージョンの観点から、制服も男女共用のデザインを採用したり、服務規律を見直す企業も増えています。

こうした情報も収集しながら、自分に最もよい選択肢をとれるよう、日頃から会社と信頼関係を構築していくことが重要です。