最近の子供の名前には、どのような傾向があるのか。命名研究家の牧野恭仁雄さんは「結、心、優、絆、愛など、人間関係をあらわす字の人気が高い。こうした名前は、人間関係が希薄で、コミュニケーションがとりにくい世相を反映しているのではないか」という――。
公園を走る子供たち
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ネットで流行中の5つの名前から見える「親の心理」

最近ネットの世界において、「龍翔(りゅうしょう)‼ 聖寿(はると)‼ 大愛(だいあ)‼ 流絆愛(るきあ)‼ 未依奈(みいな)‼」というふうに、奇抜な名前の子供に語りかける形の文の投稿が流行しているという。こうした名前が実在するのかどうかは不明だが、仮にその名前があったとすれば、親はどんな気持ちで名前をつけたのか? それを名前から逆に推理できないか? これが今回のテーマである。

世間では名前で本人の生き方や性格が決まるように思われたりもするが、そんなことはない。名前というのは親がつけるので、つけた親がどんな感覚、価値観を持ち、どんなことをテーマにして生きていたか、それが表現されるのである。

まず、最近ネットにあげられた5つの名前を例にして、こんな推理はどうか、ということから述べてみたい。

勇ましくて目立つイメージだが、奇抜な名ではない

1 龍翔(りゅうしょう)

リュウトという読み方でつけられることが多いが、リュウショウが正しい読み方である。とくに奇抜な名ではない。

龍は大きく、力強いもののシンボルである。

翔の字の中の羊とは何か? ヒツジは草原の中でも見えやすいので、よく見えることをあらわす。詳(わかるように言う)、洋(遠くまで見える海)、祥(祈りの効果があらわれる)などの字に含まれる。羽をつけた翔の字は、堂々と飛ぶことである。

大きく、たくましく、堂々としている、というイメージの名前で、わが子が広い世界で活躍するのを見たい、という願いが感じられる。ただしこういう勇ましくて目立つイメージの名前は、ときには親自身が繊細であったり、引っ込み思案であまり目立たない、ということがベースにあり、それを巻き返す気持ちでつけられることもある。

聞くと普通の名だが、他人には読めない

2 聖寿(はると)

辞典の通りに正しく読んでも30通りをこえる読み方があるが、ハルトとは読まない。聞いたときは普通の名だが他人には読めない。こういう名は最近増えていて、人に笑われるようなことはしたくないが、あまり社会と広く関わりたくもない、という感覚でつけられることが多い。

聖の字は一般には、立派な行いをあらわす字とされているが、もとの成り立ちは、耳と口と※テイ(=しっかり立つこと)を合わせたもので、人の言うことを理解し、説明ができるしっかり者のことである。親の心の奥には、聡明そうめいであることが立派なことだ、という価値観がありそうである。

寿の字は長い道を歩くことで、長生きのことでもある。昔から長寿を願って名前に使われたが、ただし親が極度に病気を恐れ、まじない的にこの字を使うケースもある。